開始3分一発退場のパナ危機を34歳ラグビーW杯戦士の堀江翔太が救った!裸足で異例会見「けっこうしんどい」
坂手の退場直後に先制されるも、10分にはワールドカップ日本大会を制した南アフリカ代表のセンター、ダミアン・デアリエンディのトライと、日本代表のスタンドオフ松田力也のゴールで逆転する。それでも浮き足立っていた感のあるパナソニックを、堀江は言葉だけでなく背中で鼓舞し続けた。 10-10の同点とされて迎えた前半35分には、敵陣に入ったところでこぼれ球を拾ってランで仕掛ける。一度は相手に止められながらも倒れずに再び前へ走り、フォローしてきた松田のゲインへ結びつけた攻撃が、スクラムハーフ内田啓介の勝ち越しトライを生み出した。 「枚数も足りなかったので、とりあえずポイントを作ろうと思って走ったら弾かれて。それでも走ったらスペースがいっぱいできたところで(松田)力也が反応してくれた。感謝したいですね」 謙遜しながら勝ち越しに至る場面を振り返った堀江だが、松田へパスを出した後も全力疾走を続け、トライを決めた内田をしっかりフォローしていた。直後にフルバック野口竜司が決めたトライも、左タッチライン際を大きくゲインした堀江の積極果敢なランが起点となって生まれていた。 数的不利でも一人ひとりのワークレート、つまり仕事量を14人が少しずつアップさせれば補える。攻守両面でメッセージを伝え続けたからこそ、堀江は会見で両足を解放させたかったのだろう。頼れる背中を間近で見た、日本代表のプロップ稲垣啓太は試合後にこんな言葉を残している。 「負ける、というビジョンはまったく見えなかったですね」
ニュージーランドで開催された2011年大会から、3大会連続でワールドカップを戦ってきた。日本中を熱狂させた昨秋の日本大会も、初めて経験する準々決勝を含めて5試合すべてに出場。獲得キャップ数は日本代表歴代9位で、フッカーでは最多となる「66」に到達している。 もっとも、37歳で迎える次回のフランス大会はおろか、引き続き指揮を執るジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ体制のもとで6月から7月にかけて行われる、ウェールズおよびイングランド代表戦への思いを問われた堀江は、苦笑しながら「ちょっとわからないですね」と言い、こう続けた。 「おじさんですからね。若い選手をどんどん起用するだろうし、僕のなかで向こう(日本代表)へ行って戦えるかどうかは疑問なところがあるので。ガッキー(稲垣)や力也のように、ジャパンの大きな試合が常に控えているなかでプレーしている若い選手たちは本当にすごいと思う。僕自身は34歳で選ばれるかどうかわからない年だし、その分、メンタル的に楽な状況ではあるのかな、と」 日本代表との永遠の決別を決意したわけではない。 会見では「トンプソン・ルーク方式が一番いいのかな」とメディアを笑わせた。一度は代表を引退しながら再び心に灯った炎に導かれ、日本大会で4大会連続のワールドカップを戦った38歳の鉄人ロックの生き様をおもむろに取りあげている。 堀江の胸中を慮れば、心身ともにベストの状態でなければ桜のジャージーに袖を通す資格はない、となるのだろう。神聖にして特別な場所だからこそ、堀江本人をして「情熱があるかどうかはちょっと微妙ですね」と言わしめる現状では、軽々しく口にはできない。 「ずっとトップへ向けて走り続けながら、自分を高めてきたんですけど、ここまで来るとけっこうしんどいもので。以前はジャパンのことも考えながら、でしたけど、いまのところはパナソニックのことしか考えていません」