【初場所】秀ノ山親方が〝横綱昇進ラッシュ〟を期待「3大関が競い合えば上の地位に近づく」
〝横綱昇進ラッシュ〟はなるか。大相撲の新たな一年が初場所(12日初日、東京・両国国技館)で幕を開ける。今場所は琴桜(27=佐渡ヶ嶽)と豊昇龍(25=立浪)の両大関が綱取りに挑戦。もう一人の大関、大の里(24=二所ノ関)も虎視眈々と賜杯奪回を狙っている。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(40=本紙評論家)による連載「がぶりトーク」では、2025年に誕生する新横綱をズバリ予想。土俵の覇権争いの行方を占った。 【秀ノ山親方・がぶりトーク】読者のみなさん、こんにちは! 大相撲の新しい一年が、初場所から始まります。昨年は大の里が優勝2回、大関昇進を果たして旋風を巻き起こしました。最後の九州場所では、先輩大関の琴桜が初優勝。豊昇龍も次点の好成績を残して存在感を示しました。今年は新横綱誕生の機運が、いつになく高まっていると感じています。 3人の大関には、それぞれに個性や特長がありますよね。琴桜は腰の重さに加えて、独特の体の柔らかさ、懐の深さがある。九州場所では勝ち急ぐことがなくなり、自分の形になるまで辛抱できるようになりました。落ち着いて相撲を取ることさえできれば、自然と自分の強みが出る感覚をつかめたのでは。初優勝という結果を手にしたことで、さらに自信を深めたと思います。 豊昇龍は先場所の相撲を見る限り、ひと皮むけた印象がある。小手先に頼らず、立ち合いから積極的に攻める相撲が光っていました。身体能力の高さや反応の早さだけでなく、勝負に対する執念でも誰にも負けないものを持っている。先場所は琴桜との相星決戦に敗れて「やり返す」と言っていましたよね。その負けん気の強さが、飛躍の原動力になるはずです。 大の里は圧倒的な馬力とスケールの大きさが魅力。ただ、新大関で臨んだ先場所は9勝6敗と振るいませんでした。追う立場から追われる立場に変わったことで、余計な力みが出たのかもしれません。同じ相手に続けて負けていることも、気になるところ。自分から積極的に苦手な相手と稽古を重ねていけば、さらに安定した成績を残せるようになると思います。 今の大関陣を見ていると、お互いに刺激し合って高め合う雰囲気が伝わってきますよね。自分の現役時代もそうでした。白鵬関に日馬富士関、鶴竜関、稀勢の里関…。私は横綱には届かなかったけれど、ライバル同士が切磋琢磨することで全体のレベルが上がる相乗効果が生まれていた。3人の大関も高い次元で競い合っていけば、おのずと上の地位に近づいていくはずです。 2年ほど前には平幕の優勝が続き、番付の価値が揺らいだ時期もありました。やはり、大相撲は横綱や大関が優勝して締めるのが本来の姿。3大関がしのぎを削る状況は、新しい時代の幕開けを予感させます。この初場所で新横綱が誕生する可能性は十分にあると思うし、年内に3人が横綱に上がってもおかしくないとみています。 大相撲の新たな「顔」が出てくれば、土俵も大いに活気づく。それぞれの力士が持ち味を存分に発揮して、ぜひ頂点の地位をつかんでもらいたいですね。それではまた! (随時掲載)
秀ノ山親方