【中村莟玉】人間国宝の養子であり歌舞伎界のホープが「歌舞伎一筋」のスタイルから一歩踏み出した理由とは?
江戸時代から数々の国民的スターを輩出してきた歌舞伎界で、次世代を担う存在として注目を集めている中村莟玉(かんぎょく)さん。立役でも女方でも目を引く華やかなルックスは化粧を落としても魅力的で、知性と愛嬌を感じさせる人柄も人気。一般家庭出身ながら幼い頃に歌舞伎の世界に入り、地道に修行を続けてきたという人生のストーリーにも“推しがい”がある。今年12月には人気漫画が原作の舞台『応天の門』に出演。新たなキャリアのターニングポイントを迎えようとしている彼に現在の心境を聞きました。 【写真】一般家庭から歌舞伎界へ。期待のホープ、中村莟玉さん撮り下ろしカット(ほか写真6枚) 中村莟玉 Kangyoku Nakamura 1996年9月12日生まれ。歌舞伎俳優。2004年に人間国宝・中村梅玉に見習いとして入門。梅丸の名で梅玉の部屋子としてデビュー。2019年に梅玉の養子となり、莟玉と改名。2019年『京乱噂鉤爪』の花がたみで国立劇場特別賞。立役も女方も勤める、今後の歌舞伎界を担う一人として期待されている。 ――歌舞伎以外の舞台作品で、長期間お芝居をするのは今回の『応天の門』が初めてだとか。主戦場から離れた世界に飛び込むのは念願の機会でしたか? そうですね。今回は本当に待望の機会でした。もともと子どもの頃から歌舞伎以外の舞台を観ることも大好きでしたし、「もし自分が出るならこんな役をやりたいな」という妄想を膨らませていたものですから。今年は活動の幅を広げるため芸能事務所に所属したばかりなのですが、こんなに早く新たな挑戦をさせていただく機会に恵まれるとは……。すごくありがたいと思っています。僕が演じる紀長谷雄(きのはせお)は不器用で騙されやすくて、いつも空回りしているキャラクターなのですが、幸か不幸か、普段の僕にすごく近いので(笑)。あまり肩に力を入れずに自然体で演じられるような気がしています。 ――舞台『応天の門』の会場である明治座に莟玉さんは歌舞伎や朗読劇で立ったことがありますし、時代設定や衣装もこれまで培ってきた経験を活かしやすい作品だと思いますが、お芝居に関してはどんな課題感を抱いていますか? 稽古で求められる方向に合わせていくのが大前提ですが、歌舞伎ではない舞台ですし、幅広いフィールドで活躍する方々とご一緒できるので、せっかくなら“歌舞伎らしさ”を意識しないお芝居にチャレンジしたいと考えています。これまで単発のテレビドラマ(2016年放送の「舞え!KAGURA姫」)と朗読劇に出演させてもらったことがあるくらいで、外の世界の表現はほぼ何も分からない状態なので、今は緊張とワクワクが混ざった不思議な気持ちです。
中村 莟玉