明日開幕の高校サッカー 注目の逸材4人
■神谷優太 [MF/青森・青森山田高3年/178cm、69kg] 異色の経歴から、メンタルの強さが伝わってくる。山形県で生まれ育った神谷は、小学生のときにテレビ越しに見た東京ヴェルディジュニアのテクニックの高さに一目惚れし、卒業とともに母親と上京。東京ヴェルディのジュニアユースの門を叩いた。 3年次にU‐16日本代表に選出された神谷は、狭き門を突破してユースに昇格。2013年には東京都国体選抜を優勝に導くなど、トップチーム昇格へ向けて順調に成長していた。しかし、今年1月に突然退団を決意。青森山田へ転入する。 同じくテレビで毎年のように見てきた、全国選手権への憧憬の念が頭をもたげたのか。神谷自身は「もっと大きく成長したかった」と振り返るが、黒田剛監督の厳しい指導のもと、中高一貫の強豪校の厚い壁に高校2年生の終盤から食い込むには、想像を絶する困難を伴ったはずだ。 迎えた最初で最後の冬。神谷が託された背番号10にはヴェルディ伝統の多彩なテクニックと、わずか10ヶ月あまりの間に一番下からはい上がってきた努力の跡、その過程でチームメイトたちから勝ち取った信頼感が凝縮されている。 卒業後には湘南ベルマーレ入りが内定。ミドルシュートに加えてラストパスのセンス、ドリブルでの突破力、正確なFKと得点につながるすべての要素を搭載する司令塔は、憧れの柴崎岳が背負ったエースナンバーに、先輩もなし遂げられなかった優勝という彩りを添えるつもりだ。 ■一美和成 [FW/熊本・大津高校3年/183cm、77kg] 素質を見込まれてポジションをコンバートされる選手は少なくない。高校2年の夏にCBからFWへ転向した大津の一美和成も、その一人だ。 もっとも、不慣れなポジションというハンデを克服し、今年4月にJ2のロアッソ熊本でJFA・Jリーグ特別指定選手として登録。さらには卒業後のガンバ大阪入りを内定させた右肩上がりの軌跡を見るだけで、計り知れないほど大きなポテンシャルを秘めていることがわかる。 長身を生かし、やや不利な体勢からでも空中戦で強引にシュートにもっていく姿勢がガンバからは評価された。加えて、中学時代は週末にクラブチームのエスペランサ熊本でプレーする一方で、平日にはJFAアカデミー熊本宇城に通って「ボールを止めて、蹴る」の基本をしっかり学んだ。 いわば「剛」と「柔」を恵まれた体に搭載するストライカーは、中学時代から務めてきたセンターバックの経験を振り返りながら不敵に笑う。 「相手ディフェンダーが何をされたら嫌なのかが、よくわかりますから」 帝京で高校日本一に輝いた経歴をもち、生まれ故郷の熊本で1993年に大津の監督に就任。県内屈指の強豪に育て上げた平岡和徳監督は、一美を「変態系FW」と呼んではばからない。ここぞという場面で規格外のプレーを見せる荒削りのエースへの、最大級の褒め言葉といっていいだろう。 熊本県の常連となった大津の最高位は、2008年度のベスト8。同じくガンバへの入団を内定させているキャプテンのDF野田裕喜とともに、チームの歴史を変える戦いに挑む。