「怖くて聞けない」親のお金事情…自分の将来のためにも重要「親のキャッシュフロー表」作成のすすめ
母親はどちらかというと浪費傾向。一人暮らしとなり支出が増えるのではないか。父親の退院後を考慮すると実家のバリアフリー化も検討したい。将来的には父母ともに高齢者向け施設への入所を考えておく必要がありそう。資金はあるのか。長男の自分が負担する必要があるのか…と、父親の入院をきっかけに、懸念事項が次々と頭に浮かんだと言う。 Aさんが選んだのは、親世帯のキャッシュフロー表の作成だった。キャッシュフロー表の作成にあたっては、“資産の棚卸”が前提であり、Aさんの懸念事項をクリアする最適な選択だと言える。 先ずは現状把握。年金等の収入、生活費等の支出、現預金を含めた金融資産の評価、保険の内容、負債の有無などを確認。さらに、今後想定される医療費や介護費、家の修繕費等を算出する。 この過程で、ご両親の旅行等の原資となっていた一時金の詳細も明らかになった。忘れていた母親の個人年金の通知があり、一時金で受け取ったと言う。「年金を一時金で受取って良かったのだろうか」と、Aさんは疑問に思ったそうだ。 キャッシュフロー表は、基本パターンを作成し、1年後にリフォームするプランや、父親、続いて母親が時間差で老人ホームに入所するプランなど、数パターンを作成し、課題を検証。 その結果、Aさんの想定以上にリフォーム予算を確保できることがわかった。Aさん曰く、「これなら少々規模が大きいリフォームもできそう。工事中は不便だろうが、両親も喜んでくれると思う。両親が自宅で快適に暮らしてくれると息子としては、とても安心」。 キャッシュフロー表作成にあたっては、家計の数字が最重要だ。今回の情報開示は、ご両親とAさんの信頼関係があってこそだったと言える。 ◆「お小遣いが減るのはいやだ」と情報開示を拒み続ける母親 50代女性Bさんは疑心暗鬼を生じる母親と対峙していた。 数年前に父親が亡くなり、Bさんの母親は大きな家に1人暮らし。母親は友達も多く、外出の度に散財しているようだとBさんは心配顔。お金の管理は母親がしていて、二人の娘たちには一切わからない。孫たちにはお年玉を奮発してくれるのでありがたいが、母親には「使い過ぎないで!」「何に使っているの?」とつい小言が多くなってしまう。 Bさんと妹さんは、近頃物忘れが目立ってきた母親を心配し、実家を売却して施設への入居を検討し始めた。 父親の遺産がいつまでもあるはずはなく、課題は施設の入所資金と母親の生活資金、そして母親を説得することだった。日々の生活費は、遺族年金の範囲に収まるのがベスト。だが、それでは、母親の交際費を賄えそうにない。母親は、「お小遣いが減るのはいやだ」と情報開示を拒み続ける。近頃は、あれこれ言われるのはゴメンとばかりに、話し合いに応じようとしない。 交渉は長期戦にもつれ込む。 そこで、キャッシュフロー表による見える化作戦の遂行となった。母親の基礎生活費や交際費を想定し、実家の売却見込額や施設の費用等を盛込み作成。当初は頑なな態度であった母親も、「これだけ使えるよ」というアプローチにすることで、態度が軟化。「お小遣いが減る」というイメージの払拭に成功した。 長期戦によって、母親自身が認知の衰えをそこはかとなく自覚し始め、さらに、施設で優雅に暮らすお友達の事例も背中を押した。かくして、母親のお金の全貌が明らかになったのだ。 その後、母親は施設に入所、実家は希望条件で売却、母親も健やかに過ごされているという。 親の豊かな暮らしを最優先に考えているというメッセージが親に伝わると、話し合いのステージができる。Bさんの母親への思いと粘り強さが、母親の安全で快適な暮らしと娘たちの安心をもたらした例だ。