全米シニアOPで惜敗の藤田寛之 「遅咲き、早咲きではなく、同じスピードで」海外挑戦20年で花開いた“マイペース”の哲学
結果を求めすぎず、気負いすぎず、自分なりのペースとリズムで
米国でも英国でも、さまざまなアクシデントやハプニングを経験した藤田は、そのたびにいろんなことを学び、強く大きくなっていった。 日本ツアーでは、20歳代で1勝、30歳代で5勝、40歳代で12勝。年齢を重ねるごとに勝利数が増えた藤田は「レイトスターター」「遅咲き」のように見える。 しかし、彼自身は「遅咲き、早咲きではなく、僕はいつも同じスピードで走り続けているんだと思います」。 50歳の誕生日を迎えてからは、日本のシニアツアーで、すでに3勝。そして今回はシニアゴルフの最高峰、全米シニアオープンで優勝に手をかけた。 昔も今も走るスピードは変わっていないのだとすれば、同じスピードでありながら、なぜ今、彼はメジャー大会で勝利に近づくことができたのだろうか。 長年の挑戦を通じて学んだことを糧として、結果を求めすぎず、気負いすぎず、自分なりのペースとリズムで自分なりの戦い方をする楽しさを見い出したことは、彼を大きく成長させた最大の要因なのだろう。 「ゴールはほど遠い」と言っていた藤田だが、どんなに遠く見えても、無理にスピードアップせず、スローダウンもせず、ずっと同じスピードで走り続けることには、忍耐が求められる。 しかし、我慢して走り続ければ、どんなに遠かった距離もいつか必ず縮まり、いつかきっとゴールに辿り着くことを、藤田はこの全米シニアオープンで私たちみんなに示してくれた。 そして彼の海外挑戦記は「これで終わりではない」はずで、まだまだ続く彼の一定スピードの走りを、これからも眺め、エールを送りたい。 文・舩越園子 ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
舩越園子(ゴルフジャーナリスト)