学マスのハロウィン曲、さすがのFAKE TYPE.仕事 / 星街すいせい路上ゲリラライブで歌った新曲が話題
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで9月27日から10月3日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および急上昇ランキングの中から要注目トピックをピックアップします。 【動画はこちら】星街すいせいが渋谷の路上でゲリラライブをしている様子(そのほかの記事中で言及しているMVも) 文 / 真貝聡 ■ まずはこの週の初登場曲の振り返りから 今週のYouTubeのミュージックビデオランキングで2位に初登場したのは、米津玄師がハチ名義で2013年10月に公開した「ドーナツホール」の新たなMV「ドーナツホール 2024」。ハチとしては7年ぶりとなるMVに、YouTubeのコメント欄には「漫画家になりたかった米津さんが『少年漫画』を意識したMVで原点回帰してんの、アツすぎる」など歓喜の声が多く上がっている。 32位にはKing & Prince「WOW」のMVがランクインした。同曲は三浦大知、音楽プロデューサーのUTA、メンバーの高橋海人の3人がタッグを組んで制作したメロウなナンバー。振付を三浦大知が担当したことも大きな話題となっている。 36位にはFRUITS ZIPPERの「フルーツバスケット」が登場した。楽曲提供をしたのは代表曲「わたしの一番かわいいところ」を手がけたヤマモトショウ。「主役は君」をテーマにしたポジティブでキュートな1曲になっている。 また突然の訃報を受けて、さユりのメジャーデビュー曲「ミカヅキ」のMVが64位にランクアップ。コメント欄には彼女の音楽を通して救われた人の声が多く寄せられた。 多種多様の楽曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。 ■ 初星学園(倉本千奈・篠澤広・月村手毬)「仮装狂騒曲」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場31位 「仮装狂騒曲」はアイドル育成シミュレーションゲーム「学園アイドルマスター」のシーズンイベントに登場する、ハロウィンをイメージした楽曲だ。歌っているのは、シナリオのメインキャラクターである倉本千奈(CV:伊藤舞音)、篠澤広(CV:川村玲奈)、月村手毬(CV:小鹿なお)。作詞作曲は日本のエレクトロスウィング界を牽引する2人組ユニットFAKE TYPE.が手がけた。 FAKE TYPE.は過去に自身のオリジナル曲として「Nightmare Parade 2020s」を発表したり、Adoの「唱」にTOPHAMHAT-KYOが作詞で参加したり、瀬兎一也に「ブギウギハロウィン-Boogie Woogie Halloween-」を提供したりとハロウィンをイメージさせる曲をたびたび作ってきた。これはハロウィンの持つダークファンタジー感やお祭り騒ぎのイメージと、FAKE TYPE.の音楽性の相性のよさゆえだろう。もちろん今回の「仮装狂騒曲」でも彼らの魅力である、DYES IWASAKIが生み出す賑やかで品のあるサウンドと、TOPHAMHAT-KYOによるファンタジーと毒気を内包した絶妙なバランスのリリックが、ハロウィンの雰囲気と見事にハマっている。 素晴らしいのは、目まぐるしく韻を踏んでいく難易度の高いラップを3人が抜群の歌唱力で歌い上げているところだ。YouTubeのコメント欄ではFAKE TYPE.の2人が自ら感想を書き込んでおり、TOPHAMHAT-KYOは「難しいラップなのに三者三様の個性と魅力の溢れる歌い回しに感激しました」と学マスのアイドル3人を絶賛。DYES IWASAKIも「昔PSPのアイマスにめっちゃハマってやってたので、ご依頼頂きとても光栄で嬉しかったです!ありがとうございました!」と喜びつつ、「歌唱も本当に素敵すぎました。めちゃ好きです!最高です!」と太鼓判を押している。 ちなみに、11月13日にリリースされる学マスのCD「Season Solo CollectionVol.3『仮装狂騒曲』」には、3人の歌唱バージョンに加えてアイドル9名それぞれのソロ歌唱バージョンも収録されているので、合わせてチェックいただきたい。 ■ Official髭男dism「Same Blue」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場33位 Official髭男dismの新曲「Same Blue」は、TBS系で放送中のテレビアニメ「アオのハコ」のオープニング主題歌だ。原作は累計発行部数500万部を突破した、三浦糀による大人気マンガ。中高一貫スポーツ強豪校の栄明学園を舞台に、バドミントン部の猪股大喜と、1つ上の女子バスケ部の先輩・鹿野千夏の恋愛を中心に描いた青春ラブストーリーとなっている。 そんな「アオのハコ」のために書き下ろされた「Same Blue」は、疾走感がありながらも壮大なスケールのサウンドに心を奪われる。三浦糀はX(Twitter)で「聞いてたら涙出てきた、、 かっこいい、、、すごい、、、 リズムどうなってるんだ、、、」と同曲に対する感動をポストした。 サウンドもさることながら、歌詞の言葉選びにも思わず唸ってしまう。特に、サビで移り変わる季節を描写しつつ、“あなた”を好きになった自分の心を表現しているところ。「よそ見する暇もない忙しい世界を / 走るように恋をしている / あなたという季節の中で」と10代が抱く恋心を的確に捉えた比喩表現や、一連のワードのつなげ方が抜群だ。 YouTubeのコメント欄では「ギリギリのラインまで音楽的挑戦をしつつ、タイアップ作品の世界観を120%表現しながら、さらに多くのリスナーの心を鷲掴みにするポップチューンに仕上げる。どれか一つでも難しいのに、3つ同時に成立させてるの、凄すぎる」という書き込みをはじめとした、作品に寄り添いながらもまだアニメに触れていない人の琴線にも触れる共感性の高い楽曲への賞賛の声が上がっている。 ■ 星街すいせい「ムーンライト」 ※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場34位 9月30日、星街すいせいが東京・渋谷のセンター街の路上でゲリラライブを開催した。Vtuberが路上でパフォーマンスを行うのは初の試みであり、しかも今回は事前告知もナシ。X(Twitter)ではその場に居合わせた人の「渋谷センター街に星街すいせいちゃんいる!!」というポストに対して、「え、え?? 路上ライブってこと?!?!?」「めっちゃ羨ましい…」などの反応が起きた。 このゲリラライブで初披露されたのが新曲「ムーンライト」だ。作詞作曲をしたなとりがXで「月明かりの下を歩きたくなるような曲です」とポストしている通り、秋の夜風に吹かれながら聴きたくなるメロウで心地のいい楽曲になっている。MVは曲の雰囲気とリンクしながら、星街すいせいが夜道を歩く姿が印象的。エンドロールで彼女が、MVの再生回数がVtuber史上最速の1000万回を突破した「ビビデバ」のダンスを踊っているという小ネタにも注目だ。 10月7日、星街すいせいはTBS系の「CDTVライブ!ライブ!」に出演し、「ビビデバ」「ムーンライト」をテレビで初披露した。番組では、青いペンライトが上がる客席に向かって歌う姿はもちろん、彼女が好きなアーティストに椎名林檎や宇多田ヒカルを挙げたり、好物である「ふくや」の明太子について話したりする貴重なインタビューの様子も流れた。放送を見逃した方は、配信が終了する10月14日までにTVerで視聴してほしい。 ※高橋海人の高ははしご高が正式表記。 ■ 真貝聡 ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。