アジア経済、貿易摩擦や中国成長鈍化がリスク=IMF
Leika Kihara [東京 1日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は1日公表したアジア地域の経済見通し報告書で、貿易摩擦の激化、中国不動産業界の低迷、さらなる市場混乱の可能性によりリスクが高まり、見通しが不透明になっていると表明した。 IMFは、中国からの持続的なデフレ圧力が、同様な輸出構造を持つ近隣諸国の産業に打撃を与え「貿易摩擦を引き起こす」可能性があると指摘し、中国政府に対し、より需要主導型の経済回復に向けた措置を講じるよう求めた。 報告書は「中国の景気減速が予想以上に長期化すれば地域経済と世界経済の両方に悪影響を及ぼす。その意味で中国の政策対応は極めて重要だ」とし、中国が不動産部門の調整を促進し、民間消費の強化策を講じる必要があるとした。 アジア経済について、過去の世界的な金融引き締めや地政学的緊張が世界需要に打撃を与え、貿易コストを押し上げて市場を不安定化させる可能性があり、リスクは「下向き」とした。「重大なリスクは、主要貿易相手国間の報復関税の激化」とし、貿易の分断が深刻化し地域の成長を阻害すると指摘した。 さらに、米連邦準備理事会(FRB)の追加の大幅利下げと日銀の段階的利上げを織り込む市場の最近の不安定な動きは、将来のボラティリティー上昇を暗示している可能性があるとした。「政策の方向性に対する予想が突然変化すれば、為替レートが急激に調整され、他の金融市場に波及し得る」とし「ボラティリティー自体は必ずしも有害ではないが、消費者の信頼と投資を抑制する恐れがある」と指摘した。 IMFの最新の予測でアジア経済の成長率は2024年が4.6%、25年は4.4%。ともに4月の予測から0.1%ポイント上方修正されたが、23年の5.0%を下回る。 中国の24年成長率は4.8%と4月の予測から0.2%ポイント上方修正したが、23年の5.2%を下回る。25年は4.5%に鈍化すると予測した。