グリコの牛乳製造停止が長期化 酪農産地に懸念広がる 計画変更し廃棄防ぐ
江崎グリコの基幹システム障害に伴い、同社子会社の4工場で牛乳・乳製品など冷蔵商品の製造停止が長期化し、産地に懸念が広がっている。例外的に製造を続ける学校給食用牛乳に加え、4月末から病院や児童施設向けの牛乳製造も再開したが、全体に占める分量は少ない。それ以外の商品の製造再開は6月中を見込み、産地関係者は「牛乳消費量や酪農家の手取りへの影響がないようにしたい」と対応に追われる。 先月14日からの冷蔵商品の出荷停止に伴い、同社は他社での委託加工による生乳の完全処理に努めている。指定生乳生産者団体は配乳計画を変更するなど取引先と連携し、生乳廃棄を防いでいる。 九州生乳販連を通じて佐賀県全酪農家の生乳を同社佐賀工場に出荷するJAさがは、酪農家の不安の声に対して「安心して今まで通り搾ってほしい」と呼びかける。生乳生産量への影響はないという。「牛乳消費がこれ以上落ちないことが大切。今後気温が上がり、需要期に入るので早い再開を願っている」(酪農課)。 同社商品が陳列棚から消えたことで、小売りからは他社への注文が相次ぐ。九州生乳販連によると、同社以外で飲用向け処理量が上がったといい、「加工向けは想定より増えていない。大型連休中も管内の加工施設がフル稼働することはなかった」と説明する。 JAさがのブランド牛乳「グリコJA牛乳さが生まれ」が欠品したことを受け、最も多く同牛乳を仕入れていたAコープ九州は、プライベートブランドや大手乳業の商品で代替を図った。「いつ復旧するか見えないので棚を埋めた。牛乳全体の販売量は落ちていない」(商品部)とする。 人気の洋生菓子「プッチンプリン」や乳飲料「カフェオーレ」が欠品になったことは全国的な影響を及ぼす。競合商品を作る大手乳業は「プリンとコーヒーで注文が大きく増えた。製造能力や資材調達の問題もあるので可能な範囲で応じている」と話す。九州・沖縄を中心に「らくのうマザーズ」ブランドで牛乳・乳製品を展開する熊本県酪連は「プリンへの注文が極端に増えている。製造能力の限界が来るときもある」(営業部)と明かす。 江崎グリコは今回の出荷停止を受けて9日、2024年12月期の連結業績を売上高、純利益、営業利益全てで下方修正した。(柴田真希都)
日本農業新聞