「スーツやご飯、誰が用意?」 衆院選小選挙区で初の女性候補者ゼロの県にため息 日頃のもやもや解消するために思い託したいのに…
長野県、現行制度導入以来初の女性候補者ゼロ
15日に公示された衆院選は長野県の5小選挙区で女性の立候補がなかった。全国では過去最多の314人が立候補。県内の女性候補ゼロは1996年の小選挙区比例代表並立制導入以来初。全国では他に富山、鳥取、佐賀の計4県で女性ゼロだった。県内の女性有権者からは落胆の声も出ている。女性議員を増やそうと活動してきた女性らは、せめて女性向けに投票基準を示そうと県内の男性候補13人へのアンケートに取りかかった。 【グラフ】長野県の女性候補の割合は全国よりも低い状況が続く
募る悔しさ
「誰がスーツをクリーニングに出して、ご飯を用意しているんだろう…」。諏訪郡富士見町では、町議1期目の西明子さん(37)が男性候補の顔を思い浮かべて言った。地方から若手女性議員らを増やそうと活動する全国団体の支援を受けて2023年4月の町議選で初当選し、自らも活動。今回は、県内で立候補を予定した女性が体調不良で辞退した事情もあっただけに、悔しさが募った。
「そもそもハードルが高い」
西さんと共に活動する同郡下諏訪町議の竹元完奈さん(28)も「残念」とため息をついた。所属するれいわ新選組が県内で男性候補さえ擁立できなかったことも踏まえ、「そもそも立候補のハードルが高い」と感じたという。
初日の演説、女性政策は触れられず
初日の演説で県内の男性候補13人から女性政策が聞かれることはほとんどなかった。
賃金格差や健康問題…
「関心を持って取り組んでくれている男性候補もいるが、どうしてもジェンダー関連の施策が脇に置かれてしまう」。高齢男性ばかりの議会構成を疑問視し、活動するパリテカフェ@信州実行委員会委員の岩崎恵子さん(48)=須坂市=は、男女間の賃金格差や女性の健康問題などを念頭に、危機感を募らせた。
経験者が語る、挑戦しにくい理由
県内小選挙区では96年以降の過去9回で女性が1~3人ずつ立候補してきた。2000年に社民党から2区に立候補し、比例復活した山口わか子さん(89)=安曇野市=は「政治を変え、働きたい女性が働き続けられる制度をつくるために女性議員は絶対必要」と訴える。 山口さんは、高額な供託金が要る現行の選挙制度について「女性が挑戦しにくい」と指摘。議席の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入の声を地方から高めていくことも必要とする。