乳製品は「全脂肪」と「無脂肪」はどちらを選ぶべき?栄養士が健康効果などを解説
イギリスでは最近、全乳(成分無調整牛乳)の売上高が増加している。それは、TikTokerたちの間で「オーツミルクより全乳を選ぶべき」との話が広まっているためだという。私たちも同じように、乳製品はフルファット(全脂肪)のものを選ぶべきなのだろうか――? 【写真】乳製品を摂るのをやめると起こる7つのこと 栄養士のローラ・ティルト氏が、ある研究結果をもとに、健康に対する乳脂肪分の影響について、解説する。 イギリスでは以前から、人々の脂質の摂取量が多いことが問題視されてきた。特に、バターやチーズなどに多い飽和脂肪酸と心血管疾患の関連性が指摘された1980年代以降は、公衆衛生の観点から必要なことであるとして、「高脂肪食品の摂取を控えよう」と呼びかけるキャンペーンが行われてきた。 また、不健康に体脂肪率が高い人が増加したことで、カロリーの過剰摂取も懸念されるようになった(体脂肪率が高いことは、慢性疾患の発症と関連している)。そして、同量の脂質は炭水化物とタンパク質のおよそ2倍のカロリーがあることから、より「スマートな選択肢」として、ローファット(低脂肪)の食品が歓迎されるようになった。 セミスキムミルク(半脱脂乳)が圧倒的な人気を誇るようになり、牛乳の売上高全体に占める割合は、およそ60%にまで増加。ヨーグルトのカテゴリーでも、最も人気があるのはノンファット(無脂肪)のタイプとなっている。
健康に良いのはどちら?
だが、その後の研究結果から、最近は脂肪に対する見方が変わり始めている。低脂肪の製品は、味を補うために砂糖や甘味料が使用されているが、それらが悪者扱いされるようになるとともに、脂質を好意的に見るようになったと考えられる。 数年前には、乳製品の摂取と心疾患リスクの低下に関連性があることを示したデータが発表された。そのなかでは、最も効果が大きいとみられるのは、全脂肪の乳製品を取っていた場合とみられることが報告されている。 医学誌『ランセット』に発表されたその論文は、21カ国の35~70歳の13万人以上を対象に行った調査結果に基づいたもの。研究チームは調査開始の時点で、参加者たちの食事に関するデータを収集。1日あたりの乳製品の摂取量によって、4つのグループに分類した(摂取なし、1カップ未満、1~2カップ、2カップ以上:1カップは200ミリリットル)。また、摂取している乳製品の種類(全脂肪または低脂肪など)も考慮した。 研究チームは、開始の時点で心臓に疾患のなかった参加者を平均およそ9年追跡。その間にどれだけの人が心血管イベント(心臓発作、心不全、脳卒中)を経験し、それらによって死亡したかについて、記録をとった。 そして、喫煙や運動量、赤身肉の摂取量といった変数を調整した結果、研究チームは、乳製品の摂取量が多い人(1日2カップ以上)は摂取していなかった人たちよりも、心疾患の発症とそれによる死亡リスクが低下していたことを確認した。 特にリスクが低くなっていたのは、全脂肪の牛乳とヨーグルトを食べていたグループだったという。