<わたしたちと音楽 Vol.39>ゆっきゅん 心を守ってくれた音楽で、次は自分が世界を広げる
想いを曲にして届けることで、より伝わる実感がある
――そうして、“ゆっきゅん”としてライブ活動などをスタートされたのが、今からちょうど10年前なのですね。 ゆっきゅん:はい、もともと、歌も踊りも好きなので。上京して数ヶ月で、出来ることから始めていましたね。2016年から電影と少年CQというユニットで活動していて、ライブをすることも、もうそれだけで楽しいんですけど、大学院を卒業した年からソロで自分で歌詞を書いて歌うDIVA Projectをやり始めて。それまでの活動だけでは得られなかったような速度や深度での反応をいただくようになりました。実際に聴いてくれた人の感想を聞くのはすごく豊かな経験で、自分が意識して作詞していたこと以外にもたくさんの発見があるし、ひとりひとりへの届き方が少しずつ違うことにかけがえなさを感じます。“一歩踏み出したいけれど、踏み出せていない”というようなシャイな人が聴いてくれることも多いので、3分くらいの曲を聴いている間だけでも、ちょっと気が大きくなるような、背中が押されるような歌を歌いたいなと思っています。SNSやインタビューで発言しているようなことでも曲として作品になると、音源で何度も聴いてもらえたり、ライブで何度も歌ったりできて、「さすがに伝わる」と感じるところがあって。だから、作品にするって素晴らしいことだなって思うし、何もかも作品に残すべきだなと感じています。 ――本当ですね。作品を通して受け取ることの大きさは、私もいちリスナーとして強い実感があります。先ほどゆっきゅんさんがおっしゃった通り“一歩踏み出したいけれど踏み出せていない人”の声がたくさん集まってくるというように、今の日本には既存の枠組みから外れていくことに強い恐怖心を抱いている人も多いと思うんです。曲を通して伝えていることでもあると思いますが、それに打ち克つにはどうしたらいいでしょうか。 ゆっきゅん:私だって何も恐れずに気にせずに生きているわけではないし、一歩踏み出す勇気を与えてくれるものとして、既存の枠組みを疑ってくれるものとしていつも芸術は側にいてくれるものであってほしいし、そうありたいと思います。自分の中に生じる違和感は見逃さないであげてほしいですね。小さなことでも「なんか嫌だな」「自分には無理だな」って思い続けたり、「自分が本当はどうしたいのか」「何を大切にしたいのか」「すぐに変われなくても、どんなことを変えたいと思っているのか」を知っておくことが私は大事だと考えています。なんか、人生って別に、乗り越えないといけないことばかりではないと思うんです。そういう人へ可能性や選択肢を提示するものとして、自分の音楽が存在できたらいいなっていう感じですかね。気持ちを楽にしたいです。