『ONE PIECE』五老星の正体は? 実在の偉人、太陽系、悪魔など、モチーフの謎を考察
『ONE PIECE』に登場する五老星といえば、世界政府の最高権力と称される存在であり、作中世界の“黒幕”に近いポジション。9月22日に放送されたアニメ第1120話では、そんな彼ら全員のフルネームという重大情報がついに明らかとなった。 【写真】実写版『ONE PIECE』の“コブラ王” とはいえ、いまだその周辺には多くの秘密が隠されており、ファンの間ではさまざまな考察が行われている。そこで本稿では、五老星をめぐる設定やモチーフの謎について、有力な考察をあらためて紹介していきたい。 まず五老星についてよく指摘されているのは、実在する人物をモチーフにしているということだ。そもそも作者の尾田栄一郎は、作中キャラクターの“元ネタ”として、自身が好きな映画の俳優などをオマージュしてきた。たとえば“青キジ”ことクザンが名優・松田優作さんの見た目にそっくりなのは、有名な話だろう。 それに対して五老星の場合は、歴史上の「偉人」と呼ばれる人物をモチーフとしていることが多い。まずスキンヘッドで威厳のある顔立ちをしたイーザンバロン・V・ナス寿郎聖は、インド独立運動の指導者として知られるマハトマ・ガンジーと見た目が酷似。金髪で顔をヒゲに覆われたシェパード・十・ピーター聖は、アメリカの第16代大統領エイブラハム・リンカーンによく似ている。 そしてジェイガルシア・サターン聖は『共産党宣言』や『資本論』の著者であるカール・マルクス、マーカス・マーズ聖は幕末から明治に活躍した政治家の板垣退助、トップマン・ウォーキュリー聖はソビエト連邦の最高指導者として有名なミハイル・ゴルバチョフ……といった具合だ。 こうして名前を並べてみると、大きな違和感があることに気づくはず。五老星は作中屈指の悪役であるにもかかわらず、なぜかモチーフとなっているのは自由や平等、革命といった理念と関わる人物たちなのだ。 たとえばガンジーは非暴力と不服従を訴えた人物で、その誕生日は「国際非暴力デー」に定められている。またリンカーンは「奴隷解放の父」と言われる人物で、有名なゲティスバーグ演説では“人は誰もが平等な存在”という理念を謳いあげた。板垣が自由民権運動を推し進め、「板垣死すとも自由は死せず」という言葉を残したこともあまりに有名だ。 ところがこうした理念は、どう考えても五老星の行動とは正反対だと思われる。彼らは天竜人と世界政府の支配する世界を維持するため、暴力によって人々の自由を奪っており、むしろ革命によって打倒される側にしか見えない。なぜそんな“逆さま”な設定になっているのだろうか。 さらに五老星のモチーフとして気になるのは、それぞれのメンバーが太陽系の惑星に紐づけられた名前をもっていることだ。たとえばサターン聖は土星、マーズ聖は火星とストレートに対応する名前となっている。 そしてナス寿郎聖の場合は「V・ナス」でヴィーナス=金星、ピーター聖の場合は「十・ピーター」でジュピター=木星。ウォーキュリー聖はおそらくマーキュリー=水星で、英語の綴りの「W」と「M」を逆さにしたネーミングではないかと考察されている。 ところで『ONE PIECE』で太陽系といえば、真っ先に思い浮かぶのはニカの存在だろう。というのもニカは古くから「太陽の神」として信仰を集めていた存在であり、世界政府との因縁も仄めかされている。太陽とセットであるはずの惑星たちが、敵対する勢力の中枢を占めていることに、もう1つの“逆さま”を感じてしまう。 また、五老星が着ている服も示唆的。彼らのほとんどは真っ黒なスーツに身を包んでおり、まるで喪服のようだ。ナス寿郎聖だけは唯一の例外で真っ白な和装だが、日本では昔は白こそが喪服の色だったとされているため、一貫性のある描写とも言える。 では彼らが揃って喪服を着ているとすれば、一体誰の死を悼んでいるのか……。これも五老星における大きな謎といっていいだろう。 そのほか、五老星の正体については「悪魔」だという説もある。彼らがいる部屋の壁に魔法陣のようなものが小さく描かれていること、原作における登場シーンで魔法陣が描かれていることなどがその根拠だ。 悪魔といえば、シャボンディ諸島の戦いにて、ブルックがバーソロミュー・くまによってナマクラ島へと飛ばされ、現地の人々に「悪魔王サタン」と勘違いされるという展開があったことが印象的。この時、ナマクラ島の住人たちは魔法陣が描かれた床の上で、悪魔を召喚する儀式を行っていた。 すなわち『ONE PIECE』の世界では、現実と同じように魔法陣と悪魔が結び付けられているということだ。こうした描写は、五老星の秘密を暗示しているのかもしれない。 なお、五老星もさることながら、彼らが従うイム様も秘密が多いキャラクターだ。いずれも世界の謎の中心に位置しており、「空白の100年」に絡んでくる重大人物であることは間違いない。今後、原作やアニメでその正体が明かされることを期待しよう。
キットゥン希美