感染対策に憲法改正は必要かーー日本はなぜ「自粛」、緩さの背景にあるもの
ーーそのためにはどうすれば。 「あんまりイデオロギー対決のないところから手をつける。もう少し事務的でピンポイントの話なら憲法審査会でもできると思うんですよね。たとえば現在プライバシー権は憲法13条の文言から導かれるのですが、それを明文化して個人データの利活用をうながすとか。流行のDX(デジタルトランスフォーメーション)の考え方を憲法改正につなげるなら、政策形成でテクノロジーを利用してはどうでしょうか」 ーーたとえばどういう方法でしょうか。 「フランスでは指定された三つのオンラインの署名サイトが15万筆以上集めたテーマについては、各界の代表者からなる諮問機関(経済社会環境評議会)が検討し、政府や国会に政策提言する仕組みになりました。これは2008年の憲法改正を受けての施策です。昔だと万単位の署名はなかなか集まらなかったけれど、いまだと署名サイトがあるので集まりやすいですよね。それをうまく使って、普通の政策ルートでは入ってこないような国民の意見とか民意を政治にインプットするという工夫です」 「民意の反映について最近、『くじ引き民主主義』がヨーロッパではやっています。選挙人名簿から人口構成に比例するように無作為に人を選んで、一定期間あるテーマについて議論してもらい、それを最終的に議会に提案するものです。フランスでは去年、環境問題についてこれをやって、徐々に立法化されつつあります。憲法改正というならば、こういう民主主義や立憲主義をアップグレードする論議をしてほしいですね」 --- 神田憲行(かんだ・のりゆき) 1963年、大阪市生まれ。関西大学法学部卒業。師匠はジャーナリストの故・黒田清氏。昭和からフリーライターの仕事を始めて現在に至る。主な著書に『ハノイの純情、サイゴンの夢』『「謎」の進学校 麻布の教え』、最新刊は将棋の森信雄一門をテーマにした『一門』(朝日新聞出版)。