すごくデキそうな全然デキない人「無能の鷹」 イマドキTV+
究極の選択。優秀に見えるけどダメな人か、ポンコツに見えて優秀な人か、選べるとしたらどっちになりたい? ドラマ「無能の鷹」(テレビ朝日系)を見ながらそんなことを考えた。 【写真】「すがすがしいほど無能な女性」を演じる菜々緒 デキる人のオーラを放っているのに、実は全然デキないビジネスウーマンがドタバタ劇を引き起こす。主人公の鷹野ツメ子を演じるのは菜々緒さん。スーツ姿でキメた外見は〝バリキャリ〟そのもの。だけど、本当はビジネススキルは皆無で、パソコンもコピー機もまともに扱えない。入社してすぐに「無能」と知れ渡って、社内ニートと化している。 鷹野が入社した理由を語るシーンがある。「子供の頃からの夢だったの。丸の内のオフィス街を、パリッとした服で、カツカツ歩いて、受付で社員証をピッてするの」。それだけかい!と、見ていた全員がツッコんだはず。夢がかなっているから、現状に何の不満もない。 イメージ先行(というかそれだけ)なので、丸の内OLっぽい立ち居振る舞いは身についている。そんな鷹野の外見だけを見て、「すごくできる人なんじゃないか」「実は爪を隠しているんじゃないか」と勝手に誤解して、独り相撲を取ってしまう人たちが続出する。 コメディーはシチュエーションと人物設定がキモ。気弱な同期の鶸田(ひわだ)(塩野瑛久(あきひさ)さん)、ダメ部長の朱雀(高橋克実さん)、ズボラなエンジニア鵙尾(もずお)(土居志央梨さん)などなど、鳥の名前がついた登場人物が、それぞれ印象的なキャラを好演している。特にいい味を出しているのが、出世欲全開の先輩社員、鵜飼(さとうほなみさん)。仕事の鬼で酒乱の気あり。「なんで出世したいんだっけ」という叫びはコミカルで切実。散々笑わされて、後味はしんみり、というテイストが私好み。 無能な鷹野は邪魔者扱いされもする。でも本人は気にしない。「だって私が会社を必要としているから。だから会社が私を必要としているかは考えない」。これはちょっとした名言じゃないでしょうか。違うか。(ライター 篠原知存)