消えた投票入場券「謎のまま」 衆院選から10日余り 沼津の一部地域憤り
沼津市の一部地域で、10月の衆院選の投票所入場券が届かなかった問題。入場券を発券した市選挙管理委員会と、配達を担当した日本郵便はそれぞれ原因究明を進めているが、投開票日から10日余りが過ぎた現在も“消えた”入場券の発見や、未着となった原因の特定には至っていない。入場券が一部で届かなかった今沢、松長両地区の有権者は「市選管、郵便局とも軽く考えているのでは」と怒りがさめやらない。 入場券未着の原因は、①入場券の一部が印字・作製されなかった②市役所側で保管したまま、または紛失した③郵便局側で保管したまま、または紛失した④配達中に何らかの理由で未配達、または紛失した-の四つが大きく考えられる。入場券の流れに沿って、原因を考える。 ■印字漏れ「調査中」 市選管によると、同市の投票所入場券は業者が印刷した台紙に、市選管が管理する有権者の住所、氏名や投票場所などの情報を市役所で印字して完成となる。印字は100世帯分ごとに自動的に行われ、100通一束で管理。「一束の最初と最後は番号を確認したが、一部ずつ漏れがないか管理するのは難しかった」と市選管の池谷志津子事務局長。市選管はそもそも一部が印字されなかった可能性を考え、データの解析作業を進めているが「あと1週間程度かかる」としている。 市選管は公示後の18~20日、3回に分けて沼津郵便局に計8万7162通の入場券の配達を依頼した。通常は全世帯分をまとめて引き渡すが、「入場券の送付が遅れ、完成した分から配達を依頼した」(市選管)という。今回未着が明らかになった地区の入場券は、19日に市選管が沼津郵便局に持ち込んだ。市選管は引き渡し漏れの有無を確認しようと、印字作業をした部屋や入場券を持ち込んだ場所、運んだ車などを調べたが発見されなかった。 ■郵便局「異常なし」 沼津郵便局に持ち込まれた後の動きはどうか。日本郵便東海支社によると、引き受けた入場券は静岡郵便局(富士市)にいったん届けられ、機械で配達区域ごと、配達順に仕立てられた。再び沼津郵便局に送られ、バイクなどで各世帯に配達された。同社側での管理ミスの可能性について、同支社広報課の陶山能志係長は「調査の結果、異常がなかった」と強調。一方で具体的な調査時期や内容について「社内でも公表していない」と回答した。投票日直前の25日、今沢地区では郵便局員を名乗る女性が「誤配がないか確認している」と各世帯を訪問していたという。同支社はこの事実を認め、「入場券未配達の情報があり、沼津郵便局が配達員に独自に調査させていた」とした。未達との関連は不明だ。 実際に入場券が届かなかった有権者は、今も憤りを隠さない。投票を諦めた50代の女性会社員は「入場券には家族の個人情報がある。市選管、郵便局ともに対応が無責任」、50代の男性会社員は「未着の把握時点で市選管は公表し、入場券がなくても投票できると周知すべきだった」と対応に不信感を抱く。 投票は入場券がなくても、選挙人名簿に登録された本人と確認できれば可能。投票所で身分証明書を持参し、受付の職員に示す。市選管の池谷事務局長は「そもそも入場券が印字されていたかの確認を急ぐ」とした上で、「未達地区では、入場券がなくても投票できることなどを同報無線で伝えたが、対応に問題がなかったか原因を究明し、考えたい」と述べた。
静岡新聞社