戦艦武蔵は最強の艦だったのか?技師や乗組員らが語る実像(4)規格外だった46センチ砲だが
わざと時間差をつける理由は発射された弾が空中で互いに干渉するのを防ぐため。発射後の46センチ主砲弾の初速は音速の2倍を超える秒速780メートル。これが空中で並んで飛ぶとベルヌーイの定理で負圧が起きてお互いが寄せられる方向に力が発生する。 「同時に発射すると互いに干渉して弾が暴走するんです。ちょっとずらして発射すると干渉しないからまっすぐ飛ぶんです」。 主砲の射程は42キロ。当時の艦砲としては最長距離を誇り、戦術的には相手の弾が届かない遠距離から攻撃を始めることが可能だった。アウトレンジ戦法と呼ばれ「武蔵」「大和」が無敵である根拠の一つだった。しかし、斜め上に撃ちあげ放物線の軌道を描いて飛ぶ主砲砲弾は直線で42キロの距離であっても実際は更に長い弾道で飛ぶことや空気抵抗もあって弾の速度が落ちるため目標弾着まで1分40秒もかかっていたという。撃った時にそこにいた目標は当然動く。砲術として相手の未来の位置を予測して発射するというテクニックもあったが「武蔵」自らも敵の弾を避けるため複雑な動きをする中でさらに射撃の難易度が上がる。 世界一の巨砲をもって敵艦をせん滅する目的で建造された戦艦「武蔵」。しかし「武蔵」は沈没するまでに敵艦に向かって46センチ砲を打つことはなかった。(NBC長崎放送 長征爾)
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