創部126年目で初の九州切符の育徳館 苦しんだ7番打者が逆転サヨナラ打 盛り上がりの中で指揮官が言い聞かせたこと【高校野球秋季福岡大会準決勝】
◆九州地区高校野球福岡大会準決勝 育徳館10―9東福岡(12日・久留米市野球場) ■夏の甲子園決勝に人気女優がお忍び観戦【写真】 両チーム併せて29安打の打撃戦を制した育徳館が東福岡にサヨナラ勝ちして初の決勝進出を果たした。 何度リードされても諦めなかった。1―5と4点を追う7回には1点を返した後、2番小森航汰(2年)が3ランを放ち同点に追いつくとさらに3点を追加。打者11人の攻撃で7得点のビッグイニングを作り逆転した。 8―8の同点で迎えた9回に東福岡に1点を勝ち越されたが、9回裏にドラマを起こした。無死一、二塁から2者連続三振で2死一、二塁に。7番荒津星瑛(2年)が簡単に2ストライクを取られた後の3球目を右中間へ運び2者が生還。土壇場からの逆転サヨナラ二塁打で勝利を決めた。「何も考えていなかった。来た球を打ち返そうと思っただけでした。複雑なことは考えず打っただけ」と殊勲打を打った荒津は少し控えめに話した。 この日4安打と当たっていた荒津を「練習でも当たっていた。コンタクトが上手な選手」と井生広大監督は評価する。夏の大会はレギュラーだったが8月の新人戦では調子を落とした。今大会に入っても調子が上がらず1回戦、2回戦はスタメンから外れた。「彼なりに悔しい気持ちを持ってやってくれた」と井生監督。スタメンから外れた荒津は「調子のいい選手に任せて自分はじっくり調子を上げようと思っていました」と焦りはなかった。練習では自分の調子に合わせてフォームを微調整している。「前の試合ではポイントが前になっていたので、準決勝は踏み出す右足を踏み込まずに、ちょっとだけ着くような感覚で打ちました」とサヨナラ打につなげた。 学校は1758年に開設された小倉藩の藩校をルーツとし福岡県最古の歴史を持つ伝統校。野球部創部は1899年とされ、創部126年目で初の九州大会出場の切符をつかんだ。勝ち進むごとにOBや関係者の熱気はどんどん高まっていったが、自身も伝統校の小倉出身で独立リーグでのプレー経験を持つ井生監督は「僕は意識せず、生徒にも意識するなとは言っていました。僕らが戦うのは東福岡さんなので、相手に向かって行けと言ってきました」と選手に冷静に試合に臨むよう言い聞かせていた。 来春の選抜大会につながる九州大会出場を決めた。まずは福岡決勝で今夏の甲子園に出場した西日本短大付と対戦。「うちらしく泥くさくやります」と井生監督。勢いに乗る育徳館ナインが強豪を撃破し初の福岡の頂点を狙う。(前田泰子)
西日本新聞社