WBC侍Jの日本人メジャー投手全滅濃厚 辞退の是非を問うべきか?
上原、田澤は、共にレッドソックスから移籍した初年度。綿密なチーム編成を練って、新戦力を迎えるチーム側も、新天地で勝負する側も、万全を期したいと考えるのは当然だろう。 そもそも過去3大会に出場した日本人メジャー投手は、たった2人しかいない。第1回大会は、パドレスからレンジャーズに移籍したばかりの大塚晶則が参加。抑えとして5試合に登板、1セーブ、防御率1.59の数字を残し胴上げ投手となったが、この大会はまだWBCが海のものとも山のものともわからず各チームも静観しており、出場に関しては本人任せの傾向が強かった。 もう一人は、日本が連覇した第1回、第2回大会で、連続MVPを獲得した松坂大輔。第1回大会は西武に所属していたが、第2回大会はレッドソックスで前年に18勝を挙げた2年目だった。しかも、オフに内転筋を痛めて体調は万全ではなかったが、その故障を無理して大会に出て、結果、そのシーズンは途中DL入りするなど大不調に終わり、2年後のトミー・ジョン手術へとつながってしまう。松坂は巨大な複数年契約を結んでいたため、球数制限が設けられていても、試合の時期が早く、調整が例年と違うなどの問題が、コンディションに大きく影響するというWBC出場のリスクを象徴する最悪の実例となった。 野手への影響は、投手ほどでもないとも考えられていたが、第2回大会でチームを引っ張ったイチローも、大会終了後、体調を崩した。 前回大会は、上原浩治、黒田博樹、岩隈久志、ダルビッシュ有、田澤純一のメジャー5人衆全員が辞退したが、松坂の例を見て、球団も代理人サイドも、なおさら慎重になったのも無理はない。 そして、もうひとつWBCという大会の価値観、権威の問題がある。 サッカーのW杯では所属クラブの契約よりもW杯出場が優先される。2002年の日韓W杯の直前に怪我をしたイングランドのベッカムが、最新の治療を施して強行出場にこぎつけたのは顕著な例だが、W杯後のプレーへの影響を考慮しての辞退は少ない。また欧州クラブの日程なども、W杯優先に作られプライオリティが違う。母国における名誉に加え、W杯はクラブのスカウティングの最高の見本市の場でもあり、ここでの活躍は、その後のキャリアアップにも大きな影響を及ぼす。選手の多くが「人生をかける大会」と明言するにもうなずけるだけの大会そのものに歴史と権威がある。