日中鉄鋼業が環境・省エネ技術で交流。千葉・幕張で専門家が最新動向報告、「脱炭素化」が大きなテーマに
日本鉄鋼連盟と中国鋼鉄工業協会(CISA)は24日、幕張(千葉県)で両国鉄鋼業の専門家が環境技術などで意見交換する「日中鉄鋼業環境保全・省エネ先進技術専門家交流会」を開催した。 同交流会は2005年に始まって以降、ほぼ毎年開催しており、今回で14回目。対面開催は19年10月以来ほぼ4年ぶりとなった。日本からは、鉄鋼連盟の環境・エネルギー政策委員長を務める福島裕法JFEスチール副社長ら30人が参加した。中国側は宝武鋼鉄や鞍鋼、河鋼、山東鋼鉄など主要鉄鋼メーカーの専門家ら36人が出席した。 交流会の開催に当たり日本側を代表して挨拶した福島氏は、「従来は省エネ・環境保全技術が中心課題だったが、足元はカーボンニュートラルに向けた大きなうねりが両国鉄鋼業を取り巻いており、今回も大きなテーマになっている。講演、懇親の場を通じて両国の専門家が交流を深め、CNに向けた取り組みが加速する契機となることも期待している」と述べ、脱炭素化に向けた日中の交流会の意義を強調した。 中国側を代表して挨拶した姜維・CISA副会長は、「この交流会は省エネ・環境保全をめぐる両国鉄鋼業の架け橋となり、相互理解を深める場となってきた」と述べ、中国鉄鋼業の環境保全・省エネ技術や脱炭素化への取り組みを紹介し、「GX(グリーントランスフォーメーション)の加速は我々世代の使命であり、互いに学び合い励まし合って鉄鋼業のGXに貢献していきたい」と語った。 交流会では両国の専門家が最新の技術動向を報告した。日本側は経済産業省の川村伸弥金属課金属技術室長が「政府のCN政策」を紹介し、「製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」リーダーを務める野村誠治日本製鉄フェローが「CNに向けた日本鉄鋼業の取り組み」を説明した。日本鉄鋼連盟の小野透特別顧問は「EU域外から見たCBAM(国境炭素調整措置)への懸念」を具体的に指摘し、JFEスチールの手塚宏之専門主監は「トランジションファイナンスとマスバランス方式を適用したグリーンスチール」について、日鉄エンジニアリングの田島征太郎氏が「環境・省エネ設備を通じた中国鉄鋼業への貢献」について報告した。 中国側は、河鋼集団の劉金哲研究員が「中国鉄鋼業の環境配慮・低炭素型発展の道と河鋼の革新実践」、CISA副総工程師の黄導氏が「CBAMが鉄鋼業に与える影響と対応」、馬鋼集団の羅武龍副総経理が「鉄鋼業におけるEPDプラットフォームの構築とグリーン鋼材の基準」、鞍鋼集団の田勇副総経理が「中国鉄鋼業におけるエネルギー効率化プロジェクトおよび省エネ・CO2排出削減技術の実践」、山東鋼鉄集団の安全環保部高級経理の楊富廷氏が「山鋼の超低排出改造技術の実践と進展」について報告した。 モデレーターは日本側は高椋規彰氏(神戸製鋼所)、中国側は馮超氏(CISA)が務めた。また23日にはJFEスチール東日本製鉄所千葉地区の見学会も行った。