アムロが一年戦争終結前に戦死 小説版『ガンダム』での正史とは違った運命とは
アムロが撃墜されたもっともな理由とは
続いて発行された小説版の第2巻『機動戦士ガンダムII』では、「地球連邦軍」により月のジオン軍拠点「グラナダ」は陥落、「キシリア・ザビ」が撤退するところから物語が始まります。 そのころコア・ファイターで脱出したアムロはサイド6の民間船に救助され、ペガサスの仲間たちと再会を果たしました。そして前回の戦闘で撃破されたペガサスとガンダムの代わりに、ホワイトベース級二番艦(後の記述では三番艦)「ペガサス・J(ジュニア)」と、ガンダム3号機「G3」を受領、新たに「第百二十七独立戦隊」となります。 一方のシャアもキシリアの用意したニュータイプ部隊の指揮官として新型MS(モビルスーツ)「リック・ドム」を受領、「シャリア・ブル」や「クスコ・アル」といったニュータイプを部下に持つことになりました。 このクスコ・アルとアムロの戦いが第2巻の物語の中心となります。またシャアの妹である「セイラ・マス」とアムロが関係を持つというアダルトな展開が用意されていました。 完結編となる小説版第3巻『機動戦士ガンダムIII』では怒涛の展開となっています。ジオンの宇宙要塞「ア・バオア・クー」へと艦隊を進めるレビル将軍。その背後から、宇宙要塞「ソロモン」にいた「ドズル・ザビ」が猛追してきました。ペガサスJはこのドズル艦隊と交戦、ドズルの「ビグ・ザム」をアムロが撃破します。 この後のブリーフィングでペガサス・Jクルーは、戦争を終わらせるためには「ギレン・ザビ」を討つべきだと考えました。その意見にアムロはシャアの協力があればと思うようになります。 一方のシャアも、ギレンがソーラ・レイで連邦軍艦隊ごとキシリアを亡き者にしようとすることを知りました。ここでシャアはアムロと協力してギレンを倒せないかと考えます。偶然にもアムロとシャアの考えは一致しました。 このアムロに呼びかけるため、シャリアは「ブラウ・ブロ」に乗り込みます。ブラウ・ブロの「ゼロ・サイコミュ」が、相手に意志を伝えやすいからでした。しかし、最初のソーラ・レイの発射で状況は一変します。この一撃で消えた数万人の断末魔がニュータイプに強力な圧力をかけました。 その結果、シャリアの説得を聞きながらもアムロは混乱からブラウ・ブロを撃墜します。しかし、その時にシャリアの意識が直撃し、アムロはようやく理解しました。目の前で「ハヤト・コバヤシ」の「ガンキャノン」を撃墜されながらも、アムロはシャアとの停戦を訴えます。 その時、このアムロの行動の変化に気付かずに、シャアの部下「ルロイ・ギリアム」はG3を撃墜しました。散っていったアムロの意志は仲間たちに拡散し、ペガサス・Jはシャアとの同盟を果たします。 一方のルロイは「俺は……とりかえしのつかないことをしてしまった……」と後悔の言葉をつぶやきました。それはかつてのアムロと同じ姿です。結果的にシャアのクーデターは成功をおさめ、戦争が終結したところで小説版は幕を閉じました。 ララァ、クスコ、シャリアといったニュータイプと分かり合えたかもしれないのに撃墜してしまったアムロ、その最期が自分のしてきたことと同じという部分に、アムロの業ともいえるものを感じざる得ません。
加々美利治