日本超電導応用開発、年1万キロメートル超の線材生産目指す。加速器・医療機器向けなど拡大
金属系超電導線材メーカーの日本超電導応用開発(本社・神奈川県茅ヶ崎市、CEO・大坪正人氏)は、3年後をめどに年間生産数量1万キロメートル以上を目指す。現在の生産数量は研究開発向けなどで年間約300キロメートル。加速器・医療機器・分析装置など同社の超電導線材を使用する機器の製品化と合わせて需要拡大を見込む。需要増の中でもさまざまな素材・サイズ・形状の線材ニーズに応えるため超電導ラボ(山梨県中央市)で製造ラインを増設する考え。長期的には「年産1万キロメートルからさらに生産量を拡大したい」(大坪CEO)という。 超電導線材は冷却すると電気抵抗ゼロで電流を流せる線材。細径でも大電流を流せることから、応用機器の高性能・小型化などに寄与できる。同社は電線導体などを製造販売する明興双葉から分離・独立した金属間化合物などの超電導線材メーカーで、金属関連の事業会社に出資する由紀ホールディングスの傘下企業。ニホウ化マグネシウムやニオブ三錫、ニオブ三アルミ製の超電導線材を製造しており、新たな素材の線材開発も進めている。 日本超電導応用開発の強みは極細線材が製造可能な技術。細くしなやかにすることで超電導線材完成後にコイル化できるため銅線と同様に使用可能。顧客側の熱処理設備を省略できるほか、高耐熱でない絶縁被覆が使用可能な点などがメリットとなっている。明興双葉の極細銅伸線の製造技術をベースに、日本超電導応用開発として製造条件などに関する技術開発を進め、極めて細い超電導線材を実現している。 現在はさまざまな用途で研究開発向けに納入している。顧客ごとの仕様に合わせて必要とされる温度・磁場・電流・曲げなどの特性を作り込む活動に注力。極細線材をきめ細かな特性で製造可能な強みを生かし、顧客とともに応用製品の開発に取り組んでいる。 今後同社の線材を用いる応用機器の開発フェーズが研究から製品化へと進む中で、需要は大きく増える見通し。同社では加速器や医療機器、分析装置などの製品化に期待。需要増の中でも顧客それぞれのニーズに合わせた多品種供給が可能な体制を整えるため、現在1ラインの製造体制を増強する考え。ビレット製作や伸線、熱処理などの設備一式を増設し「3~4ライン体制を構築したい」(大坪CEO)という。設備増強と合わせてベンチャーキャピタルや事業会社からの資金調達にも取り組む方針だ。 将来は核融合発電や量子コンピューター向けなどでの需要増も見通す状況。長期的には年産1万キロメートルからさらに生産量を拡大させたいという。またさまざまな新規用途開発にも注力。その成果などが来月に米ユタ州ソルトレイクシティで開催予定の学会「ザ・アプライド・スーパーコンダクティビティー・カンファレンス」で発表される予定となっている。