明治HD「コスタイベ」承認は、化血研不祥事の「貸し」の対価ではないのか
化血研の血液製剤をめぐる不正が背景に?
前述の通り、KMバイオロジクスは化血研の事業を継承して発足した。その経緯の発端には、2015年に露見した化血研の組織的不正がある。 国の承認していない方法で血液製剤を不正製造していた化血研に対し、当時の塩崎恭久厚労大臣は厳しい処分を求めた。しかし、化血研は一部のワクチンを半ば独占販売していたため、厚労省は「倒産」させるわけにはいかなかった。厚労省は大手国内企業に化血研の救済を打診したが全て断られ、最終的に明治が中心となって事業を継承した。 この時の厚労省の対応は目に余った。約40年にわたり、悪質な隠蔽工作を続けた化血研を擁護し、最初から適切に対応するつもりはなかったのだ。 象徴的なのは、この問題の対応策を議論するための「血液製剤やワクチンの製造業界の在り方を検討する作業部会」に、診療報酬を担当する保険局は参加していなかったことだ。 化血研の不正を糺すつもりなら、化血研が医療機関から医薬品購入費用として得た金を返還させなければならない。個別の医療機関が対応することは難しく、厚労省が調整せざるを得ないだろう。その場合、担当部局は保健局だ。厚労省OBは「保健局を外しているのですから、厚労省は、最初から化血研に金を返させるつもりがなかった」という。 もし、一般の医療機関で、同様の不正が露見すれば、同省は過去に遡り、診療報酬の返還を求めるはずだ。こうやって多くの医療機関は倒産、身売りしてきた。完全なダブルスタンダードである。 もちろん、厚労省にも言い分はあるだろう。戦前から続く「軍産複合体」の利権は容易に清算できない。改革には激しい「痛み」を伴う。厚労大臣がなんと言おうと、問題解決を先送りするしかない。こうやって、利権体制は温存された。 これがコスタイベの特別承認へと繋がったのではないだろうか。そうだとしたら、こんなことをしている限り我が国のワクチン開発力は低下し続け、国民の不信感は増すばかりだ。抜本的な見直しが必要である。
上昌広