祝・PSP生誕20周年 黄金期の名作4本から振り返る“愛された携帯機”の軌跡
2004年12月12日にソニー・コンピュータエンタテインメント(当時/SCE)が発売した携帯ゲーム機「PlayStation Portable」(PSP)が、今年で生誕20周年という節目を迎えた。 【画像】PSPの黄金期を支えた4作品のスクリーンショット PSPは専用の光ディスク規格「ユニバーサル・メディア・ディスク」(UMD)を採用したSCE初の携帯ゲーム機として脚光を浴びた。 同社が開発した家庭用ゲーム機「PlayStation2」(PS2)に匹敵するようなグラフィック性能にくわえ、音楽や動画の再生機能も取り入れた「マルチメディアプレイヤー」という側面も大いに話題を呼んだ。最終的な本体売上台数は約8200万台(世界市場)に上り、後継機「PlayStation Vita」(PS Vta)へ本格的にバトンを渡すまで、PSPは国産メーカー製の携帯ゲーム機として強い存在感を発揮した。 本稿ではPSPの生誕20周年に合わせ、同ハードの“黄金期を支えた名作”を4本ピックアップ。筆者の視点を交えつつ、「PSPはどのように愛されたのか」を振り返っていく。 ■『モンスターハンター ポータブル』(カプコン) 2004年にカプコンが生み出したハンティングアクションゲーム「モンスターハンター」。そのPSP初参入タイトルとなったのが、『モンスターハンターポータブル 』だ。 2025年2月に最新作『モンスターハンターワイルズ』発売を迎える同シリーズは、当初PS2用ソフトとして産声を上げた。その後は現在にいたるまでさまざまなプラットフォームで展開されているが、「モンスターハンター」はPSPがあったからこそ飛躍的な成長を遂げたと言っても過言ではない。なぜならシリーズ伝来のゲームシステムを洗練しただけでなく、PSPの通信機能を用いたマルチプレイに対応したことで、“友人と気軽に遊べる協力プレイゲーム”という不動の地位を築き上げたからだ。 同シリーズは2005年の『モンスターハンターポータブル』でPSPに初参入し、続く『モンスターハンターポータブル 2nd』で本格的にヒット。その約1年後に登場した『モンスターハンターポータブル 2ndG』は、廉価版を合わせて400万本(国内市場)を超えるソフト売上記録を叩き出した。続編として開発された『モンスターハンターポータブル 3rd』も驚異的なセールスをマークしたのは言うまでもない。 総じて見るに、「モンスターハンターポータブル」シリーズはゲーム市場におけるPSPのシェアを拡大させ、「モンスターハンター」自体を20年以上続く巨大IPとして大きく成長させた。 ■『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』(KONAMI) コナミデジタルエンタテインメントが2010年に送り出した『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』(MGS PW)は、同社が手掛ける人気シリーズ「メタルギアソリッド」(MGS)のPSP参入期における集大成と言える。 「MGS」と言えば20世紀から続く架空の戦史をベースとしつつ、時代を跨いでミリタリー色の強いストーリーを展開することで知られている。1970年代の中米を舞台にした『MGS PW』も例にもれず、主人公「ビッグボス」(ネイキッド・スネーク)が「ピースウォーカー事件」の渦中に飛び込むところから物語の幕が上がる。 敵兵の目をかいくぐり、戦闘を極力避けながら単身で任務遂行にあたる……。こうした「MSG」特有のステルスアクションは踏襲しつつも、本作は従来のシリーズ作品で見られなかった「CO-OP」(協力プレイ)を実装したのが最大の特徴だ。『MGS PW』では通常ミッションから巨大兵器の破壊まで、ストーリー中で課せられる任務に「潜友」(フレンド)を招待し、一緒にプレイすることができた。 『モンスターハンターポータブル』の項でも触れたが、PSPを語る上で「協力プレイ」という文脈は絶対に欠かすことができない。実際に「モンスターハンターポータブル」シリーズの爆発的なヒットを境目に、『ゴッドイーター』や『討鬼伝』など、俗に「狩りゲー」と呼ばれるさまざまな作品も誕生している。そうしたムーブメントの最中、「MGS」でも友達や家族が手を取り合って楽しめる協力プレイが実装された点は、やはり意義深いと言えるのではないだろうか。 ■『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(スパイク) ジャンルを問わず多種多様な作品が生まれたPSPだが、とりわけアドベンチャーゲーム(ADV)は、PS Vitaへ代替わりを果たした後もラインナップが豊富に揃っていた。その内訳はアニメや漫画とのメディアミックスの一貫として発売される場合も多かったが、時に新規タイトルが颯爽と登場し、ゲーマーの耳目を引き付ける様子もいくらか見受けられた。スパイク(当時)が開発した推理ADV『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(ダンガンロンパ)は、まさしくその好例だろう。 類まれな才能を持つ高校生を集め、全編にわたって彼らに理不尽な”コロシアイ”を強いる『ダンガンロンパ』。本作は単なる推理ADVではなく、「ハイスピード推理アクション」と謳っているのが注目ポイントだ。 ゲーム内は証拠等を地道に集めるアドベンチャーパートと、集めた証拠をもとに会話から矛盾点を導き出す学級裁判パートに分かれている。この学級裁判パートはシンプルに選択肢を選ぶ作業にとどまらず、画面内を飛び交うキーワードを正確に狙い撃つ「ノンストップ議論」や、画面内のボタンを押し分けて一対一の口論に挑む「マシンガントークバトル」等々、アクション性が随所に組み込まれている。 ポップな作風とテンポの良い学級裁判が独特の風味を帯び、数あるPSP向けADV作品のなかでも、『ダンガンロンパ』は異色かつポテンシャルにあふれたタイトルとして仕上がっていたように思われる。余談ではあるが、本作のシナリオを手掛けたゲームクリエイター・小高和剛氏はその後も「ダンガンロンパ」シリーズに携わり、2023年には「ダークファンタジー推理アクション」を謳う『超探偵事件簿 レインコード』を開発した点も興味深い。 ■『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-』(スクウェア・エニックス) ここまでアクションやADV作品を中心に取り上げたが、PSPの黄金期を支えた名作というテーマについて語っている以上、やはりRPG作品にも言及しておくべきだろう。 「モンスターハンターポータブル」シリーズの影響もあり、PSPは協力(マルチ)プレイという遊び方が想起されやすい。しかし過去のソフト売上本数に目を向けると、じっくりと1人で遊べるRPG作品もかなりの人気を誇っていたことがうかがえる。 そうしたPSP産RPG作品の中でも、スクウェア・エニックスがおくる人気シリーズの七作目『ファイナルファンタジーVII』(FF7)から生まれた『クライシス コア ファイナルファンタジーVII』(FF7CC)は、スピンオフタイトルながらも国内市場で80万本を売り上げる大ヒットを記録した。本作においてプレイヤーは、バスターソードを携えたソルジャーの青年「ザックス・フェア」を操り、『FF7』本編の過去にどのような悲劇があったのかを体験していく。 『FF7』本編が従来のアクティブタイムバトルを軸にしていたのに対し、本作はそれらをベースにボタン連打で攻撃が繰り出せるアクション方式を採用。戦闘時のスロット演出に応じてキャラクターを強化する「デジタルマインドウェーブ」システムも合わさり、初心者でもクリアまで楽しめるゲームバランスに調整されていた。 高品質なゲーム内容にくわえ、2007年の発売当時からすでに「グラフィックが綺麗」と称されていた『FF7CC』。本作は長らく現行機に向けたダウンロード販売がされていなかったが、2022年にHDリマスター版となる『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII- リユニオン -』が登場。現行機でもプレイできる手段が約15年ぶりに整備されたことで、再び注目を集める結果となった。
龍田優貴