ホストクラブに通いつめる理由とは? 恋愛に“タイパ”を求める女性たち
昨今、利用者が増えているマッチングアプリと、若い女性客が増加しているホストクラブ。両者にはどのような違いと共通点があるのか。家族社会学の第一人者である山田昌弘氏と、自身もホストクラブに熱心に通う現役大学生ライターの佐々木チワワ氏が、「今どきの恋愛のリアル」について語り合う。 ※本稿は、『Voice』(2024年3月号)より、内容を一部抜粋・編集したものです。 聞き手:編集部(中西史也)
マッチングアプリはタイパが悪い?
――今回は、家族社会学の第一人者であり、編著書『「今どきの若者」のリアル』(PHP新書)で「マッチングアプリと恋愛コスパ主義」について論じた山田昌弘さんと、ライターとして歌舞伎町の現場を取材し、自らも熱心にホストクラブに通う佐々木チワワさんに、マッチングアプリとホストクラブを中心とした「今どきの恋愛のリアル」について議論いただければと思います。 【佐々木】私はX(旧Twitter)のプロフィール欄にも書いているように、歌舞伎町で「真実の愛」を探しているので、ぜひお話ししたいテーマです。いま(対談が行なわれたのは2024年1月)大学の卒論を執筆しているのですが絶賛苦戦中で、山田先生にいろいろと相談したいくらいです......(笑)。 【山田】おや、そうでしたか。 ――そもそもチワワさんは、マッチングアプリを利用したことはありますか。 【佐々木】はい、私はTinder(ティンダー)を使っていました。位置情報をもとに近くにいる登録者のプロフィールが表示され、マッチすればメッセージをして会うことができるアプリです。 私はあるとき親と喧嘩して「もうあなたにご飯はつくらない」と言われたので、Tinderを使ってお金をもっている人とマッチして、親よりも良い飯を食べてやろうと擦れていた時代がありました(笑)。 【山田】それはたくましい(笑)。 【佐々木】ただ、私にとってアプリはタイパ(タイムパフォーマンス)が悪いと思って、いまはほとんど触っていません。 【山田】いまの若い世代はむしろ、コスパ(コストパフォーマンス)やタイパを重視してマッチングアプリを利用しているように見えます。もともと知らない人でもマッチさえすれば、最低限のメッセージで簡単に会うことができるわけですから。なぜアプリはタイパが悪いと感じたのですか? 【佐々木】マッチしてから連絡をするのすらハードルが高いというか、億劫なんですよね。かといってメッセージを重ねずに早々に会うと、相手がどういう人かも、会って楽しいかもわかりません。 私にとっては、よくわからない人と一時間会うくらいなら、ホストクラブに行って一時間で数万円を払うほうがよっぽど有意義です。アプリは金銭的なコスパは良いかもしれないけれど、自分好みのイケメンを選んで一定の時間で接待してくれるホストのほうがタイパで上回っていると感じます。 【山田】マッチングアプリのなかでも、Tinderは利用者の年齢層が若く、手軽に会って遊ぶ人が多いですね。真剣な出会いや結婚をめざす人は、Pairs(ペアーズ)など別のアプリを使うのでしょう。 【佐々木】私はアプリ自体使わなくなってしまったので、「真実の愛」どころか、恋愛自体から遠ざかっているかもしれません......(笑)。 ただ、私の周りを見ていて気になるのは、アプリを使って「とりあえず付き合った」という子が多いことです。もちろん付き合ってから相手のことを徐々に知っていく場合もあると思いますが、「彼氏」「彼女」というステータスを得ようとしている気がするんです。 私は、特段好きでもない「彼氏」に労力を費やすくらいなら、互いの関係性に名前がなくてもホストクラブにお金と時間をかけたいですね。