ホストクラブに通いつめる理由とは? 恋愛に“タイパ”を求める女性たち
ホストの「アイドル化」
――ホストクラブの利用客は、かつては女性社長や成功した事業家の妻といった富裕層が中心でしたが、現在は20代など若い世代が増えていると言います。なぜ若い女性がホストクラブにハマるのでしょうか。 【佐々木】いちばんの理由は、店に行ってお金さえ払えば必ず会えて、手厚いもてなしで承認欲求を満たしてくれるからでしょうか。マッチングアプリでの恋愛や彼氏・彼女の関係のように、「なんで会えないの」と思う必要はない。 ホストクラブは、精神的に不安定な子が比較的多い若い年代にとって非常に優しいシステムになっているんです。 【山田】マッチングアプリは基本的には互いに「選ぶ側」でも「選ばれる側」でもあるわけですから、メッセージ段階でも会ってからも双方に一定の努力が求められます。その点ホストクラブはその場に行けば必ずもてなしてもらえるから、金銭的なコストの程度はありますが、たしかにタイパが良いと言えるかもしれません。 【佐々木】ホストもマッチングアプリも結局、時間とお金を重ねて「関係性」を構築していくと思うのですが、相互性があると喪失への恐怖はつねに抱えますよね。 そんななか「推し」文化の広がりとともにホストが「アイドル化」していたり、通う目的はさまざま。店に行けばいつでも受け入れてくれる安心感から女性客がホストクラブを「居場所」と呼ぶことがある一方で、キャバクラで男性客がそう捉えることはあまりない。 それにキャバクラでお客さんと店外で会う「同伴」では基本的に男性客がすべてお金を支払いますが、ホストが店外で女性客と会う「アフター」で支払うのはじつはホスト側です。 【山田】そうなのですか。 【佐々木】はい。女の子を歩かせないようにタクシーを使い、料理ごとにワインを変えるペアリングの知識もあって支払いまでしてくれる。女性にとって、ホストが同年代の一般の男性と比べてキラキラして見えるんです。 【山田】なるほど、いまだに「男性が女性を大切にするべき」というジェンダー規範は根強いのでしょう。女性客には、ホスト(男性)がお金や労力において自分(女性)に尽くしてくれることで好かれているという感覚がある。 もちろん利用客は店舗でホストクラブに金銭を支払うわけですが、キャバクラの同伴とは違って、ホストのよりプライベートに近いアフターではあくまでも女性側が金銭的にも尽くされている構図なわけですね。 【佐々木】おっしゃるように、ジェンダー規範はかつてよりは薄れているとはいえ、いまの若い世代にもけっこう残っていると思います。