【ライトノベル最新動向】「青ブタ」「チラムネ」新刊や『誰が勇者を殺したか』驚きの続編も 8月の注目ライトノベル
「青春ブタ野郎」「チラムネ」といった超人気ラブコメの最新刊が登場する8月のライトノベル。まず鴨志田一による「青春ブタ野郎」シリーズの方は、『青春ブタ野郎はガールフレンドの夢を見ない』(電撃文庫)が8月9日に登場して、ヒロインの桜島麻衣がバーチャルシンガーとして騒がれていた霧島透子の正体は自分であるとステージで発言する。 前巻『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』でちょっとした騒動があって、梓川咲太にしか見えないミニスカートのサンタクロースに扮した女性と、ネットで評判になっていた霧島透子との関係が見えたかに思ったら、麻衣の身に影響が及ぶ事態となって話は急展開。10月発売の『青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない』で完結するシリーズのラス前の盛り上がりが描かれていそうだ。 「青春ブタ野郎」シリーズは2025年に『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』が放送されることが決定。TVシリーズ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』に始まって、『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』の3作の劇場アニメで紡がれてきたストーリーの続きが映像化される。原作から読む人は完結までの展開を味わった上で、アニメでクライマックスへと向かう流れを追体験できるだろう。 非モテからの大逆転を楽しむ展開がセオリーのラブコメで、リア充の千歳朔という高校生の少年を主人公にして、周囲で起こる色々な事態に取り組んで乗り越えていく楽しさで読ませる点が、逆に評判となった裕夢『千歳くんはラムネ瓶の中』シリーズ。その最新刊となる『千歳くんはラムネ瓶の中9』(ガガガ文庫)が8月20日に登場して、学園ものにあって最大級のイベントともいえる文化祭がいよいよ開幕する。 千歳朔のクラスの出しものはオリジナル演劇の「白雪姫と暗雲姫と優柔不断な王子さま」で、白雪姫と暗雲姫になぞらえられた女子のどちらを選ぶのかといったイベントの先に何が待つのかを想像しながら刊行を待とう。 シリーズ最新巻では、2023年のラノベ界を揺るがした駄犬『誰が勇者を殺したか』に続編『誰が勇者を殺したか 預言の章』(角川スニーカー文庫)が8月1日に登場。魔王を倒したパーティーで、勇者だけが帰還しなかった理由を探ってメンバーを訪ね歩く展開から、不穏な空気が漂い驚きの真相が明かされ読者を仰天させ前作の、これ以上はない完璧な帰結に続編など可能なのかといった声もあった。『預言の書』はそんな疑問を驚きの方法によってクリアし、まがうこと無きシリーズ最新巻としてファンを満足させる。 新人賞受賞作からは『負けヒロインが多すぎる!』や『千歳くんはラムネ瓶の中』などを送り出した小学館ライトノベル大賞の第18回で大賞を獲得した青葉寄『夏に溺れる』(ガガガ文庫)が8月20日に刊行。8月24日に元クラスメイトの夏乃光から「母さんを殺してきた」と衝撃的な告白を受けた夜凪凛。成績優秀にして眉目秀麗で学園でも頂点に立っていた光が、なぜか学校の4階から飛び降りようとしている場面に行き会わせた凜は、光との親交を深めていく中で彼が親との関係に悩んでいることを知る。そして告白。行き場のない若者の衝動がもたらすスリリングな青春の模様を見せてくれそうだ。 第17回講談社ラノベ文庫新人賞で優秀賞となった作品が、8月2日発売の秋乃つかさ『猫のJKとサラリーマン』(講談社ラノベ文庫)。就職2年目の佐藤康介が仕事を終えて自分のアパートに戻ると、知らない女子高生がやって来て、康介の同僚の河嶋涼葉は自分の姉だと告げる。なおかつ自分は猫になってしまっていて、人間だと認識できるのが康介だけとも。本当なのか虚言なのかも含めて気になる設定。サラリーマンと女子高生の同居というシチュエーションも興味を引く。涼葉の動向も含めどうなるかを確かめてみたい作品だ。 第30回電撃小説大賞で銀賞の長山久竜『星が果てても君は鳴れ』(電撃文庫)は8月9日発売。命を絶とうとしていた主人公の前に、元国民的女優の星宮未幸が現れ自殺を止めるための同居を始める。こちらも奇妙な状況から男女の同居が始まるストーリー。星宮には未来が視える能力があり、何か理由があって足を止めてしまったといった設定が、どのような結末をもたらすのかが気にかかる。 タイトルから中身が気になる作品では、8月20日発売の枩葉松『大学で一番かわいい先輩を助けたら呑み友達になった話』 (ファンタジア文庫) が学生生活での出会いからのハッピーな日々を想像させてくれる。8月1日発売の恋狸『TS転生した私が所属するVTuber事務所のライバーを全員堕としにいく話』(HJ文庫)も、タイトルそのままに転生でTSでVTuberといった要素てんこ盛りの濃密さで楽しませてくれそうだ。 キャラクター小説系では、愁堂れな『軽井沢探偵譚 平成元年連続殺人事件』(集英社オレンジ文庫)が「平成」という前時代が始まった1989年を舞台に、祖父が残した数億円もの遺産をめぐって佐久間隼人が相続争いに巻き込まれて起こる事件を描く。相続の条件として示されたのが薫という女性に結婚相手として選ばれることだが、どうやらその正体に一癖ありそう。殺人事件も起こって混乱する展開と、平成元年という年配者ならバブルのまっただ中として記憶している時代の描写が気になる。8月20日発売。 夏ならではのゾクっとさせる作品を1冊。静月遠火『何かの家』(メディアワークス文庫)は、“決して1人では入ってはいけない”と言われている家にまつわる物語。夏休みに帰省した大学生の冬馬が、民俗学を学ぶ学生・雪穂のフィールドワークに付き合い、1人では入ってはいけない家への案内を頼まれる。道中に雪穂は冬馬に、その家には必ず誰か1人が囚われているという奇妙な話をする。ただの迷信なのか、それとも本当のことなのか。真相を確かめたくなる。8月23日発売。
タニグチリウイチ