「難しさを痛感した」10月最初の試合と、「敬服する」敗退後の日本代表【Jリーグ、ACL、W杯予選「サッカー秋の陣」最大の敵】(4)
スポーツ競技で勝つためには、心身の充実が必要だ。フィジカル、メンタルともに相手を上回ってこそ、勝利を手にできる。もしも、どちらかが欠けていたなら、諸刃の剣となって自分に襲いかかってくることもある。そうした厳しい現実を突きつけられた「サッカー秋の陣」について、サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。 ■【映像】格下相手でも「決して油断しない」最強の日本代表がアウェイで5ゴール快勝
■人間だからこその「難しさ」と「楽しさ」
こうして、10月の最初の週では、メンタル面での難しさを痛感させるような試合が続いた。自信を持って戦わなければいけないのは当然だが、それが過信や慢心につながってしまってもいけない……。 「プロであれば、どんな試合でも集中して戦わなければならない」 それは、間違いなく真理であり、正論ではある。だが、コンピュータゲームの世界ではないのだ。選手も人間なのだから、さまざまな状況に影響されるのは当然のことだ。 選手のスペックは、そうした心理面に大きく左右される。それをマネジメントするのは監督やコーチの重大な(最大の?)仕事なのだが、他人の心理面の変化をすべて把握することも難しい。 だから、試合によってチームのパフォーマンスにはバラつきがあるのは仕方のないことでもある。ヨーロッパの強豪チームだって、いつでもUEFAチャンピオンズリーグの決勝トーナメントのような試合をしているわけではない。リーグ戦で下位チームと対戦するときには、集中を失って思わぬ敗戦を喫することもある。 こうしたことは、人間がやっているのだから仕方のないことだし、いや、むしろ、その点こそがサッカー観戦の楽しさであるとさえ言えっていい。
■格下相手でも「慢心しない」代表チーム
そんな中で、感心するのが日本代表チームだ。 アジア予選では、格下相手の試合が多くなる。最終(3次)予選に入ってからでも、大量点を奪って勝つような試合が続いている。しかも、ほとんどの選手はヨーロッパのクラブで活躍しており、長距離移動や時差とも戦いながらプレーしているのだ。 毎週のようにプレミアリーグやブンデスリーガの強豪と戦い、チャンピオンズリーグでもプレーしている選手たちが、アジアの格下相手の戦いでも、決して慢心することなく、高いレベルの集中を保っているのだ。 彼らでも、そうした集中が保てないと、1月のアジアカップのようなことになってしまう。 ヨーロッパのリーグ戦が佳境に向かおうとしていた1月に、1か月近くクラブを離れて戦わなければならなかったアジアカップ。冬の移籍市場も気になるところだった。そんなこんなで、アジアカップのときには選手たちは日本代表の戦いに集中できず、格下相手にも失点を繰り返し、準々決勝敗退で大会を後にした。 そのときの反省もあるのだろうが、ワールドカップ予選ではクラブの戦いも中断し、短期間の代表活動に集中することができるのだろう。それにしても、すべての試合でハイレベルのパフォーマンスを発揮している日本代表の選手やスタッフには敬服せざるを得ない。
後藤健生
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