内紛で崩壊した自動運転企業「TuSimple」、元CEOの再チャレンジ
事業が立ち行かなくなった自動運転関連のスタートアップ、TuSimple(トゥーシンプル)の共同創業者で元CEOのシャオディ・ホウが、自動運転トラックの開発に再び挑戦している。彼が設立した新会社のBot Auto(ボットオート)は、ベンチャーキャピタルから2000万ドル(約29億6000万円)を調達し、来年の商業運転の開始を目指している。 ヒューストンに本拠を置くボットオートは、テキサス州内の高速道路で自動運転トラックを運行し、ヒューストンとサンアントニオにある倉庫や物流施設の間で貨物を輸送する計画だ。今年初めに上場廃止となったサンディエゴ本拠のトゥーシンプルが、自社ではトラックを保有せず、自動運転技術を外部にサービスとして提供していたのに対し、ボットオートはトラックを直接所有して運営する。 ホウによると、同社は初期段階においてはLiDARやレーダー、カメラを搭載したトラックに人間のバックアップドライバーを同乗させるが、将来的には無人での運行を目指しているという。「自動運転テクノロジーの最適な提供方法を再考する時がきた。トゥーシンプルは、ディープラーニングの第一波の中で誕生したが、今はディープラーニングの第二波が到来しており、採用すべき新技術も登場している。また、組織構造も新しくなった。ボットオートは規模が遥かに小さく、運営も効率的で、より新しいテクノロジーを導入している。それでも、自動運転技術の開発という目標は変わらない」と、彼は語った。 ホウが目指すのは、人間のドライバーが運転するトラックと同等のコスト(1マイル当たり約2.5ドル)で完全自動運転トラックを運行できるようにし、慢性的なドライバー不足の解消を助けることだという。 しかし、カリフォルニア工科大学でコンピューターサイエンティストを学んだホウにとって、この挑戦は大きな賭けだ。トゥーシンプルは、2022年初頭までロボットトラック輸送の商業化においてウェイモやオーロラなどの大手をリードしているように見えた。同社は主要企業との契約や、大手トラックメーカー数社と開発計画を発表し、2023年後半までに完全自動運転による貨物輸送を提供することを目指していた。 しかし、トゥーシンプルは、2021年初めにIPOで14億ドル(約2070億円)を調達した直後から苦境に直面した。2022年に同社のトラックが高速道路の中央分離帯に衝突する事故が発生し、同社のイメージは大きく傷づいた。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は昨年、この事故の正式な調査を行わないと発表し、検証は終了した。