内紛で崩壊した自動運転企業「TuSimple」、元CEOの再チャレンジ
トゥーシンプルが直面した「内紛」
■トゥーシンプルが直面した「内紛」 さらに、ホウと同社の取締役会や幹部との間で事業戦略を巡る激しい対立が起こり、問題はさらに深刻化した。また、トゥーシンプルの共同創業者であるモー・チェンが設立した中国のトラック会社、Hydron(ハイドロン)との技術共有を対米外国投資委員会(CFIUS)が懸念し、連邦政府による調査が行われた。CEOだったホウは、トゥーシンプルの取締役会からハイドロンとの関係を疑われ、2022年後半に解任された。 この騒動により、トゥーシンプルは昨年事業を停止した。トゥーシンプルの株主は、同社が安全性の実績を誇張し、創業者や幹部とハイドロンとの関係を隠蔽したとして訴訟を起こしたが、先月になって1億8900万ドル(約279億円)で和解に応じた。 一方、ボットオートは、技術面に加え、少なくとももう一つの大きな課題に直面する可能性がある。同社に勤務する40人のエンジニアの大半はトゥーシンプルの出身だ。ホウは、独自のソフトウェアを開発していると主張しているが、トゥーシンプルの二代目のCEOに就任したチェン・ルーは、ボットオートに対して訴訟を起こす可能性が高いと述べている。 「我々と直接競合しているのだから、彼を訴えるのは当然のことだ。数十億ドルをかけて開発した企業秘密や知識を全て盗むことは許されない」とルーは話す。 ホウは、トゥーシンプルを去るに当たって退職合意書に署名しておらず、報酬も受け取っていないと主張し、同社から訴訟を起こされることについて心配していないと述べている。 「米国の素晴らしいところは、自由の国であることだ。誰でもあらゆる理由つけて他人を訴えることができる。我々は、新しいテクノロジーを自分たちの手で作り上げており、訴えられる筋合いはない」と彼は語った。 現在、トゥーシンプルのルーは事業を転換し、AI技術を活かして中国でビデオゲームやアニメーションを作ろうとしている。ホウは解雇されて以降、同社には一切関与しておらず、彼らの新事業には懐疑的だ。 「彼らがやっていることはまるで、リオネル・メッシがサッカーを引退してバスケットボール選手になるようなもので、全くナンセンスな話だ」とホウは語った。
Alan Ohnsman