奈良教育大附属小「不適切指導」事件のその後…生徒を知る現場の教員より文科省の通達が大事?「あんたは正しいだけで心がない」と言いたくなる「ふてほど」教育の実情
「法令違反」という言葉が一人歩き
多くの人は、メディアが垂れ流す報道を鵜呑みにする。「そういう決まりだから」「政府がそう言っているから」という理由で、常識を問うこと、考えることを放棄する。そうやって人は思考停止に陥り、マニュアルに従うことが「正義」となり、社会そのものがマニュアル化されていく。 奈良教育大学学長が会見で謝罪した「法令違反」という言葉が、メディアに拡散され一人歩きする。そんなことがあったのか、そりゃひどいね、と。一方で、附属小の実践を知る者、今日の教育のゆくえに危機感を抱く専門家は声を上げる。 大阪大学の髙橋哲は、おかしいのは、学習指導要領の法的性質を「大綱的な基準」のみと限定した最高裁判決に反し、あたかも学習指導要領を法規のごとく扱い遵守させようとする文科省の方だと指摘し、千葉工業大学の福嶋尚子は、「子どもたちの教育を受ける権利を十全に保障するには、子どもたちに相対する教師の教育権と教職員集団の自治が十分に確保されている必要があるということは、戦後日本の教育行政の大原則だったはず」と、今日の職員会議の形骸化に疑問を投げかける*2。 奈良教育大学は、附属小の現在の専任教員の約半数を、籍を残したまま出向させ、3年以内に復帰させるとの方針を打ち出している。しかし、上記のような指摘を鑑みれば、それらの教員の出向を阻止することをきっかけに、もっと大きな展望も見えてくる。 私たちは声を上げることで、学習指導要領の「大綱」としての法的位置づけと、目の前の子どもを中心に教育課程を柔軟に編成するために認められているはずの現場裁量の認識を、社会で広く共有する機会にしなくてはならない。 そして、校長の権限を強め、教育現場における民主主義を奪った職員会議の形骸化にスポットライトを当てるチャンスにしなくてはならない。 「子どもが主人公」の学校をつくりたい……。そんな願いが広く共有されますように。そう願う教員が、処分されるのではなく、大事にされる社会でありますように。 【追記】 2024年4月、奈良教育大学は3名の教員の出向、2名の配転を強行した。同年6月、出向を命じられた3名の教員は、大学の設置法人である奈良国立大学機構を奈良地方裁判所に提訴。「奈良教育大附属小を守る会*3」などの有志が立ち上げた団体が支援している。 裁判の行方に注目したい。
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