金は持ってるけど会うときは「安い服」を着ていく…「頂き女子」グループで配られた“詐欺マニュアル”の全貌
「頂き女子」の間で流行る詐欺マニュアル
マッチングアプリなどで知り合った男性3人から計1億5千万円以上を騙し取った詐欺罪などで「頂き女子りりちゃん」を名乗っていた渡辺真衣被告(25)に、名古屋地裁が22日、懲役9年、罰金800万円の判決を言い渡した。 【写真】奨学金で借金600万…女子大生風俗嬢「その後の現実」 世間から大きな関心がある詐欺事件だが、いまだネット上では似たような「頂き女子」による犯行自慢がたくさん見られる。恐ろしいのは、渡辺被告の逮捕後も「りりちゃんのやり方は受け継ぐ」などと言って、堂々と詐欺活動を続けると公言している信奉者たちまでいることだ。彼女たちに連絡をとってみた。 「いまはLINEで頂き女子のサークルを作って集まってます」 返事があったひとりの女性は、渡辺被告の売っていた詐欺マニュアルを購入し、これまで1千万円以上を荒稼ぎしたと堂々と述べた24歳の自称「楽園ちゃん」。Xでは「頂き女子」を含む別名で「4カ月で1000万達成。来年は億めざします」と書いていたが、やり取りをしている最中にアカウントは削除。 「逮捕されろとか、アンチみたいなのが湧いてきたので」 自ら「頂き女子」と名乗ったのは昨年からだが、その言葉が「頂き女子」なる言葉がたくさん聞かれるようになったのは21年ごろからだ。それまで広まっていた「パパ活女子」の中から、「パパに借金があるとかウソをついて大金をせしめる」という連中が出てきて、そこで注目を浴びたのが「頂き女子の参考書」なる渡辺被告による詐欺マニュアルだ。 渡辺被告はSNSや動画などで、かなりの金を騙し取れていることを豪語。 人気Youtuberの番組にまで出演し、「男心が分かっている」などともてはやされ、まるで詐欺師のインストラクターみたいになっていた。 相手の恋愛感情を利用して男性たちから金を騙しとる手口を具体的に指南し、これが詐欺ほう助罪に問われた。
“オジ”たちを手玉に取るテクニック
「楽園ちゃん」もまさに、そのマニュアルを購入し、「貯金額さりげなく聞くとか、これ以上出せないと言われたら闇金に行くと言って止めてくるかで判断するとか、本当に使える話ばかりだった」という。 彼女は大学中退後に就職した事務職を半年で辞めてキャバクラ店で働いていたが、過剰なノルマや人間関係に悩み退店。自分を指名していた常連客とのデートで1時間5000円をもらったことがきかけで、「パパ活」が始まった。 「マッチングアプリでいくらでもオジ(男性)たちが集まってくるんで、会う度に2万とか3万とかくれる人が何人かできたけど、りりちゃんみたいに1日で600万とか聞いたら、神みたいに見えちゃって。説得力がすごかった。私の中ではいまもカリスマ」 そのうち、同じように「頂き女子」をしている女性たちと連絡を取り合うようになり、いかにうまく男たちから金を騙し取るかの情報交換が始まった。LINEのグループには13人の「頂き女子」がいたが、渡辺被告が逮捕された後は3人が抜けたが、残り9人はいまだ詐欺活動を続けているという。 「りりちゃんが逮捕されたのは、マニュアルを販売したからでしょ。私は動画に出たりもしないし、目立たなければ逮捕とかないと思う」 実際、渡辺被告が昨年8月、最初に逮捕されたのも詐欺マニュアルの販売によるものだった。「楽園ちゃん」は、男性たちからうまいこと金銭をもらうこと自体は「強盗とかじゃないんだから被害届とかなければ捕まらないと思う」と信じている。 渡辺被告が売ったマニュアルには、恋愛経験がなく、物欲がなく、人と話すことが少ないタイプの男性を「頂ける男の特徴」と定め、信頼関係を築くためのアプローチの仕方や、金を騙し取ることを「魔法をかける」と表現しての具体的な手法、金をもらった後もすぐに縁を切らない「アフターケア」と称する手口などが書かれている。 「楽園ちゃん」のLINEメンバーうち6名がこのマニュアルを持っているというから、まるでカリスマ詐欺師の弟子のようだ。渡辺被告がこれを1000部以上を売ったとされるから、1000人もの巧妙な詐欺師が生まれていてもおかしくはない。 渡辺被告は稼いだ金の大半をホストに散財したが、「楽園ちゃん」は「家賃40万円のマンションに住んで、イギリス旅行に300万円、整形手術に120万円を使った」と日常的な贅沢をしているという。 「でも、会ってるオジたちは、私を貧乏だと思っているんで、会うときは安い服を着ていく」 渡辺被告は「オジ」とか「魔法」なる言葉で、やっている犯罪をマイルドな感覚にさせていた感じがしたが、「楽園ちゃん」もそこは同じ。そもそも「パパ活」や「頂き女子」なんてのも、罪悪感を打ち消す悪い効果があるように思える。 罪悪感とどう向き合っているのか「楽園ちゃん」に質問を重ねていたら、LINEアカウントをブロックされてしまった。日本には「第2のりりちゃん」がまだ無数に存在していると思った方がいいだろう。海外ではかなり蔓延っているロマンス詐欺、これと同種なのだから「頂き詐欺」と呼びたいが。
片岡 亮(フリージャーナリスト)