異端児「FAF」 “技巧派ストリート”で世界目指す
ショー会場は渋谷ヒカリエのイベントスペース。客入れのBGMが止まると会場奥のスペースにモデルが一斉に登場し、そこから一人ずつステージに上がり、ウエアを披露した。
国内外の技術と文化を
リアルクローズに込める
コレクションは、ワークやミリタリー、スポーツを軸としたストリートウエアをベースに、高い加工技術と独自の素材選びでオリジナリティーを加えていた。ファーストルックはサーマルのトップスとパンツに、黒のレザージャケットを合わせたスタイル。ジャケットの襟に大きなスタッズを大胆にあしらい、袖には8mmほどの極小スタッズをダイヤ柄に乗せて、職人による繊細な加工技術を伝える。ダック素材のように見えるカモフラージュ柄のセットアップは、実はデニム素材を加工したもの。岡山県で生産したデニムを、京都の職人が色を抜き、その上にプリントしている。ほかにも、弾丸を打ち込んだようなダメージをレーザー加工で表現したジーンズや、太ももにフェード加工を施してビンテージ風にしたスエットパンツなど、技巧派なストリートウエアを連発した。
海外の伝統文化とストリートウエアの融合にも挑戦する。今シーズン着目したのは、インドの伝統的な刺子生地“カンタキルト”。このキルトをカレッジスエットのレタードデザインや、シャツ型のダウンジャケットに落とし込んだ。「世界には面白く、後世に伝えるべき文化がたくさんある。この生地以外にも、さまざまなものを使い、その価値を発信したい」(高林ディレクター)。
全27ルックと比較的コンパクトな分、ブランドの強みを凝縮したコレクションだった。ランウエイでもリアルなスタイリングにこだわったため、ブランドのスタンスは多くに伝わっだろう。一方で、さらに振り切ったコーディネートを加えていくのも面白いかもしれない。
ステージ中央に複数のマイクを置く演出には、“声なき声を届ける”という思いを込めた。終盤に登場したモデル数人は「笑顔あふれる、カラフルな世界を」「フレッシュなエナジー」などのメッセージを伝えた。
ショー後の二人に感想を聞くと「この後の打ち上げが楽しみ。来ます?(笑)」と冗談混じりに答えてくれた。アパレル未経験から急成長を遂げてきた同ブランドは、これからどんな世界を見せてくれるのか。未来に向けて歩み始めた、二人の将来が楽しみだ。