なぜ人間関係で「悩む人」と「悩まない人」がいるのか…精神科医が「これを知れば悩まずに済む」と説く3分類
■人間関係で悩まないための秘訣 以上、いくつかのタイプ分析を紹介してきました。相手の自己重要感を満たす手がかりが、少しつかめたでしょうか。3タイプごとの接し方は、すでに述べた通りです。 「リスク/ホープ」に関しては、相手に「頑張ってほしい」ときに活用できます。部下や後輩、パートナーや子供など、自分が応援している人のモチベーションを上げたいときは、相手がどちらのタイプかを考えましょう。 たとえば、大学受験を控えた子供を持つ親御さんの場合。ホープタイプの子供なら、「受かったら、車買ってあげる!」など、相手が楽しみに思うようなことを言うのが正解です。対して、リスクタイプなら「受からないと大変だよ。浪人はさせてあげられないよ」と、危機感に訴えるのが(少々気の毒ですが)効果的です。 では、「フィックス/フレックス」についてはどうでしょうか。 とくにフィックスの人が注意すべきは、フレックスの人をむやみに断罪しないこと。「こういう人なのだ」と認めることを意識しましょう。この両者は近しい間柄になると――とくに恋愛関係では、何かと軋轢が起こります。 フィックスさんが「愛してるって言ったよね? あれはウソ⁉️」と怒る。フレックスさんが「いやぁ、気が変わることもあるじゃん……」と火に油を注ぐ。 そんな修羅場が、しばしば展開されるのです。 もちろん、この場面でフィックスさんが傷つくのは当然です。気持ちを押し殺して平気な顔でいましょう、とは言いません。しかし、別れてから何年経っても、「あの人は悪い人だった」「あんな人を信じた私ってバカ」と思い続けているとしたら? 相手を恨むのも、自分を責めるのも、悩む時間がもったいありません。そこは「あの人、フレックスだったんだなー」で済ませたほうが、ずっとラクです。「良い・悪い」で考えないことは、人間関係で悩まないための重要な秘訣です。 ■「合う・合わない」は誰しも当然ある ここまで登場したすべてのタイプに、「良い・悪い」の差はありません。あるのは、単なる「違い」だけです。 「パフォーマンスタイプってガメツそう」「ブランドタイプって俗っぽい」 「ホープタイプって能天気」「リスクタイプってネガティブ」 「フレックスって不誠実」「フィックスって融通が利かない」などと、自分と異なるタイプをジャッジしないことが大切です。 「合う・合わない」は、当然あります。合わないから距離を取ることもあるでしょう。それも、「どちらが悪いから」ではなく、ただ「違った」ということです。善悪でもなく、優劣でもなく、異なる個性として存在を認める。 このフラットな視点を持てれば、前稿でご紹介したスキル「期待しない」にも大いに効果があります。 ---------- 西脇 俊二(にしわき・しゅんじ) 精神科医 弘前大学医学部卒業。2009年よりハタイクリニック院長。2008年より金沢大学 薬学部 非常勤講師、2010年よりEuropean University Viadrina非常勤講師も務める。自身もアスペルガーであり、その苦労を乗り越えた経験を生かした著作も多い。テレビ出演のほか、ドラマ『僕の歩く道』『相棒』『グッド・ドクター』、映画『ATARU』等の医療監修でも活躍。 ----------
精神科医 西脇 俊二