【新日本インタビュー】エル・デスペラードにとってベルト=「僕がやりたいことの一番重要なパーツ」
IWGP Jrヘビー級王座を2度戴冠
私が2024年のプロレス大賞を選ぶとすれば、間違いなくこの選手を推す。エル・デスペラード。IWGP Jrヘビー級王座を2度戴冠、ベスト・オブ・ザ・スーパーJr優勝、そしてプロデュース興行を大成功させ他団体のビッグマッチでも名勝負を繰り広げた。そのプロデュース能力は完全に開花し、ますます輝きを増している。そのデスペラードに、2024年を振り返ってもらった。(取材・文=橋場了吾) 【写真】「可愛い妹。いいマスク兄妹だ!」…スターライト・キッドとの“マスク2ショット” 2024年の1.4東京ドームで宿敵・高橋ヒロムから2年強ぶりにIWGP Jrヘビー級王座を獲得、その後SHOの策略でタイトルを落とすも今年2度目の戴冠を果たす。しかしかつての盟友・DOUKIの初戴冠を許してしまうという、エル・デスペラードにとってはジェットコースターのようなベルトとの縁になってしまった。 「全く落ち着かないチャンピオンですよ、2回獲って2回落としていますからね。それこそ取り返したシリーズの最後に落とすという、一人だけ前時代的なことになってしまいましたが(笑)。ただ、ベルトを目指すということはやっぱり団体に所属している選手全員が目指さないと、意味がなくなるものだと思うんですよね。だから、本来全員がほしいものなのに、目を向けられなかったり試合順で価値がどうたらこうたらって言われたりしちゃうと……なんだか偶像崇拝みたいになってしまうなと。 でもIWGPという名前がついている以上、その団体の誰が一番なのかという証明書みたいなものですから。極論を言うと、ベルトは外から新日本プロレスを見たときに、一番わかりやすいイメージ・顔役だと思うんですよ。だからこそ余計に僕がやりたいことにとって一番重要なパーツなので、やっぱりほしいですよね」
『DESPE-invitacional』ではプロレスの見方を広げたかった
2024年に大きな話題を集めた興行のひとつである『DESPE-invitacional』。6月10日に後楽園ホールで開催されたこの興行はPPVでも放映され、会場ももちろん超満員。参戦選手には招待状が送られるという斬新な演出もあり、期待感がパンパンの状態で当日を迎えた。この興行をプロデュースしたのが、前日にベスト・オブ・ザ・スーパーJrを初制覇したデスペラードだ。 「今年でデスペラードとして10年を迎えたといわれて、それを言い訳に面白いことをやろうかと。『DESPE-invitacional』については仲間からやろうぜといわれて、最初は断っていて。というのも、僕はやりたい選手と自分がやりたいだけであって、僕がやりたい選手同士が戦っているのを見たってジェラシーでしかないからいいよと。でもね、色々なカードを組むことでプロレスというものの見方をもっと広げられるんじゃないかという助言もあって、確かにそうだなと。自分の独りよがりではなく、プロレスの見方をもっと広げたい、お客さんにもっとプロレスって面白いよというのを提供していこうと思って。 例えば、鈴木みのると葛西純がただただバイオレンスな選手ではなくて、とんでもない引き出しがある選手なんだよというものを見せられるんじゃないか、とか。そうしたら、もう期待していた以上のものをお見舞いされたんで、僕自身がずっと楽しんでいましたね。ただメイン(エル“エクソティコ”デスペラード&男色“ダンディ”ディーノ対ディック東郷&外道)だけは何をしていいかわからず、リング上の僕の不安な顔をDVDで見ることができます(笑)。 僕のイメージするフェロモンズって、今成“ファンタスティック”夢人がカメラ回しまくって、飯野“セクシー”雄貴が日本語を喋らずセクシーしか言わず、ただとんでもない体で、とんでもないパワーでずっと尻を出していて、要所要所で男色“ダンディ”ディーノがコントロールし、竹田“シャイニングボール”光珠がプッシュアップでジャンプするっていう、各々のパーソナリティを表しているのが凄くて。単純に僕自身しんどいときに、本当にフェロモンズを見ていてバカ笑いしていましたから。でも後で冷静になってみてみると、ちゃんとキャラ立ちしてチームとして動いている……これはやばいなって。だから、直接ディーノさんに招待状を渡したというのはありますね」 デスペラードがハードコアやデスマッチを好きなのは周知の事実だが、『DESPE-invitacional』でも多くのハードコアマッチが組まれた。その中で“線”となってデスペラードとの対戦が実現したのは、DDTのクリス・ブルックスだった。 「唯一自分の中でルールを作ったのは、必ず新日本の選手を入れるということで。エル・ファンタズモが海外でハードコアな試合をしていたので、二人は申し訳ないと思いつつもDDTさんからMAOちゃんとクリスに入ってもらって。その空気の中に竹田(誠志)さんに入ってもらったどうなるんだろうと……案の定、試合が始まった途端3対1で面白かったですけど(笑)。その中でクリスから指名を受けてDDTさんでシングルをしたんですが、途中はさみでマスクを切られて。新品のはさみなもんでサクサク切れるし、危うく目の近くに刃が向いて『怖い、怖い』って言っちゃってますし。 そのはさみ、途中リングに刺さっちゃうんですけど、デスマッチって何が起こるかわからないのでプロたちが周りを固めてないといけないというのを再認識したというか。だからこそリスペクトも生まれますしね。クリスとカリスマ(佐々木大輔/昨年のDDTの両国大会でデスペラードがシングルで戦い勝利)がDDTさんの両国国技館(12.28)でメインでタイトル(KO-D無差別級選手権)を賭けて戦うんですよね? 僕、あげまんなんじゃないんですかね(笑)」 (3日掲載の後編へ続く)
橋場了吾