韓日国交正常化60周年に影を落とす弾劾政局【コラム】
この秋にソウルで開催された韓日両国の外交関連イベントを取材した時の話だ。このイベントはこれまでとは比較にならないほど規模が大きく、出席者も名が知られた人物ばかりだった。記者が冗談交じりに「イベントがこれほど大規模になった。来年はどうしたいか」と質問すると、日本の外交官たちは「来年はもっと自信がある」と語った。
ところがここ最近は年末の集まりを兼ねて日本から派遣された外務省職員たちの表情は数カ月前とは全く違っている。ある職員は「非常戒厳令事態後、来年に向けて準備していた(日本の)外交官たちは非常事態だ」と語る。来年は韓日国交正常化60周年を迎える。ところが2022年の就任以来、韓日関係を記録的に改善した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が弾劾され、5年前に「ノージャパン」の痛みをもたらした共に民主党に政権が渡るのかどうか、どちらにしても不確実な状況となったため、これまで計画していた国交正常化60周年関連イベントも事実上「オールストップ」と言える状況となったのだ。 「非常戒厳令事態」は多くの専門家が指摘するように韓国における民主主義の危機であると当時に、経済・文化・防衛産業など様々な分野で高まった国力によりその歩幅を広めていた韓国外交にも青天の霹靂(へきれき)とも言うべきニュースだった。来年の国交正常化60周年記念行事に向け今年1月からすでに準備に取りかかっていた日本の外交官たちにとってもそうだ。来年の韓日外交関連のイベントに経済界の大物やKPOPアイドル歌手を招待するため、日本の外交官たちが韓国の大手企業や芸能事務所の関係者を渉外していた事実はすでに1月の時点で伝え聞いていた。日本の主要メディアも尹大統領と岸田文雄前首相が実現した前例のない関係改善を高く評価し、またこれを後押しした。 ところが現場にいる日本の外交官たちはやっと回復した韓日関係が非常戒厳令事態で水の泡にならないか心配している。来月予定されていた石破茂首相の来韓は戒厳令騒動で延期となり、今月予定されていた菅義偉元首相(日韓議員連盟会長)の来韓もキャンセルされるなど、その影響はすでに表面化している。読売新聞や朝日新聞など日本の主要メディアは韓国の非常戒厳令関連ニュースを連日1面に掲載し、両国関係後退を懸念している。日本で活動する韓国外交官たちも事情はそう変わらないだろう。 政府間の外交は数年単位の政権から必ず影響を受ける。それでも両国国民による「民間外交」が韓日関係をしっかりと支えている点は希望だ。今月22日に大阪で日本人女優による韓国ドラマ原作の劇団ミュージカルが大成功し、また今月14日のJPOP歌手の来韓公演には2万人以上の観客が集まったが、このような事実もこれを証明している。1965年に韓日両国の外交官たちが汗水流して実現した国交正常化の結実がやっと民間で花開こうとしている。今後はやっと開いたこの花が政治によって再び踏みにじられないよう願うばかりだ。 金東炫(キム・ドンヒョン)記者