長崎総科大附が苦しんだ末に決勝進出!海星は試合終了間際の失点からPK戦で涙
「総附だろう」「総附がワンランク上だろう」戦前、多くの県サッカー関係者は、長崎総合科学大学附属高校の快勝を予想していた。 【フォトギャラリー】長崎総科大附 vs 海星 長崎総科大附、長崎海星、長崎日大、国見。準決勝に進出した4チームの中で実績面において海星は一つ劣る。その予想は妥当と言えたかもしれない。だが、11月5日、諫早市のトランスコスモススタジアム長崎で行われた第102回全国高校サッカー選手権長崎予選準決勝の第1試合で、優位に戦いを進めたのは海星だった。 コンディション不良で準々決勝を欠場していた須田隼太をトップでスタメン起用した海星に対し、「相手が立ち位置を変えてきたことで、後に重くなった(定方敏和監督)」長崎総科大附は苦戦。 長いボールを織り交ぜて須田に裏を狙わせることにより、長崎総科大附の強みであるプレスをかわし、小倉遥翔のキックからのセットプレーで海星がチャンスを構築。守備でも球際の強さを見せて、長崎総科大附の金城琉煕のサイドからの突破や、福島文輝のポストプレーを抑えこんでいく。 長崎総科大附も中盤で精力的に動き対抗するがリードを奪ったのは攻勢の海星。51分に西山陸のアシストから藤本龍星が先制ゴール。リードを許した長崎総科大附は、63分に甲斐智也のドリブルで打開を図りチャンスを作るも、フィニッシュの精度を欠きノーゴール。 その後もリードを許す焦りからイージーなミスをするシーンが目立つ長崎総科大附だが、猛攻を繰り返すことで着実に海星の守備陣にダメージを与えていた。試合終了1分前、攻撃を受け続け後に重くなった海星に対して、左サイドから再三の仕掛けを見せていた甲斐が起死回生の同点ゴール。これで1対1となり試合は延長戦へと突入。 消耗が激しい両チームの戦いは延長戦で勝負を決めることができずにPK戦へと突入するが、6人目のキッカーが外した海星に対して、6人全員を成功させた長崎総科大附が勝ち上がり。苦しんだ末の決勝進出を決めた。 「伝統を作るのは大変だけど、それが崩れてしまうのは一瞬。絶対に先輩たちが作ってきた伝統を崩させない」 大会前、キャプテンの平山零音はそう語っていた。今年、長崎総科大附は県予選を優勝し、選手権本大会に出場できなければ2010年以来13年ぶりの県内では無冠となる。それは長崎総科大附に関わる全ての人にとって絶対に避けたいことだろう。 試合後の囲み取材で質問が決勝戦の話題に及んだとき、長崎総科大附の定方監督はそれまでの温和な表情から一転して表情を引き締めてこう言った。 「今年は一つもタイトルを取れていませんし、自分たちはチャレンジャー。失うものはなにもない。全力で挑むだけです」 何も得てはいない今だからこそ、失ってはならないものがある。長崎総科大附は次週の決勝戦、その先の全国、そして伝統の継承をどの学校よりも強く意識している。 (文・写真=藤原裕久)