【首都大学リポート】「気持ち」で放ったサヨナラ打 苦しんだ4年間の思いをぶつける東海大・鵜沼魁斗
頭に浮かんだ見逃し三振の打席
桜美林大2回戦では、4回裏に代走として出場し、そのまま指名打者に残った鵜沼。中盤までは先行を許す厳しい展開だったが、1打席目は死球。8回裏の2打席目は送りバントを決めて同点に追いつくきっかけを作った。 そして、9回裏は前の打順に入っていた主将・植本拓哉(4年・明石商高)が内野安打でつないで一死一、二塁。「植本が『勝ちたい』という姿を見せてくれた」とチャンスでの打席に燃えていた。また、同時にその時の鵜沼の心には前週に行われた日体大2回戦での打席が思い浮かんでいた。 1点を追う9回に代打で起用されたが見逃し三振でゲームセット。「最後のバッターになってしまい、それからずっと練習でも打てていなかったのですが、あの見逃し三振があったのでこの打席では最初のストライクから打っていこうと思っていました」。 2ボールとなり「ストライクを取るのが大変そうだったので、ストレートを狙っていきました」という3球目。狙い通りの真っすぐをたたいた打球は右中間を深々と破っていった。 「今季は調子が悪かったからこそ、なんとか打ちたかった。『最後は気持ちだ』と思っていました」。そんな鵜沼の執念が乗り移ったかのような一打が東海大に今季2つ目の勝ち点をもたらし、長谷川監督も「鵜沼は場数を踏んでいるだけあって、勝負勘がある選手。サヨナラのような、ああいう場面では任せられる」と評価した。 今シーズンも終盤に差し掛かり「優勝は難しいかもしれませんが、絶対に3位以上になって関東大会に進み、明治神宮大会に出場したい。今年は主将の植本を中心に本気で日本一を目指してきたので、自分も副主将として支えたい。この4年間は思うような結果を残すことはできませんでしたが、最後に勝てればいい」と鵜沼。卒業後は社会人でのプレーすることが内定しているがその前に、思うようなプレーができずに苦しんできたこの4年間の思いを学生最後のシーズンにぶつける。 文=大平明
週刊ベースボール