豪華列車「ななつ星」乗務員の知られざる研修内容 社外公募を含む多様な人材が1年の研修を受けた
国内有数のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」(以下、ななつ星)。「世界一の豪華列車」と称されるななつ星では、どのようなクルー(乗務員)が、どのような研修を受けてきたのでしょうか。その舞台裏について、九州旅客鉄道株相談役の唐池恒二氏著『ななつ星への道』より一部抜粋・編集のうえ、ご紹介します。 【写真を見る】車両公開セレモニーで披露された「ななつ星in九州」 ■社外からも「クルー」を公募 ななつ星では、乗務員のことを「クルー」と呼びます。JR九州の他の列車やD&S(デザイン&ストーリー)列車では「客室乗務員」で統一されていますが、ななつ星ではクルーです。
ななつ星のクルーを社外からも公募するか、社内からのみ選抜するか、については当初意見が分かれました。チームの幹部を含め、構想当初から社内選抜案を推す声は少なくありませんでした。 2011年5月の会議で、自分でもそれが正解かどうか自信はなかったのですが、思い切って「社外からの採用も検討してはどうか」と提案してみました。案の定、多くから反対され、そのときは私のほうがすごすごと引き下がりました。 「列車の乗務員になるには鉄道の知識と経験が必須要件だ」
「JR九州の社員のなかにも優れた接客サービスができる者も相当数いる」 「新たに社外から採用となると、人件費が増大する」 反対を主張する理由は、こういったものでした。それらはすべて、頭では理解できました。しかし、まだ心に引っ掛かるものがありました。 日本初のプロジェクトです。私たちの知らない世界に足を踏み入れていくわけです。 (その道のプロの力が必要なのではないか……ホテルのコンシェルジュ、航空会社の客室乗務員、有名レストランのソムリエといった、サービスのプロの力が要るのではないか)1年後の2012年4月、今度は断固とした口調で言いました。
「やっぱり、クルーは社外からも採用しよう」 クルー1期生25名は、JR九州の社員から12名と、社外公募で飛び込んできてくれた13名で構成されました。 社員の12名は全社員のなかから接客サービスに特に秀でた人を選抜しました。社外からの13名は、それまでさまざまな企業のサービス、職場で多くの経験を積んでいます。 航空会社の国際線CA(キャビンアテンダント)経験者、一流ホテルのコンシェルジュ、クルーズ客船の乗員、高級レストランのソムリエ、人気バーテンダーなど。12人の社内採用組、13名の社外公募組を合わせた計25名のメンバーが揃いました。