後出しの女帝・小池都知事が打ち出した「無痛分娩費用の助成」が図らずも迫る産科の重い選択
■ そもそも無痛分娩に対応できる産科が限られる 一方の産科側は無痛分娩費用の助成をどう受け止めているのだろうか。 まず、無痛分娩費用の助成が実現したとしても、「そもそも無痛分娩に産科が対応できるのか」という慎重論が各方面から聞こえてくる。 重要なこととして、無痛分娩に対応していない施設では、無痛分娩を希望しても現時点では受け入れられない。 この点については、無痛分娩に関連する学会や団体で構成される無痛分娩関連学会・団体連絡協議会(JALA)の2020年の調査から状況を知ることができる。 日本の全分娩取扱施設1945のうち、「無痛経膣分娩」の実施施設は505で、割合は26.0%。内訳は病院が946施設中234施設(24.7%)、診療所が999施設中271施設(27.1%)で、4施設に1施設という割合だ。逆にいえば、無痛分娩については門前払いの施設が少なくない。 分娩取扱施設は年々減少している。そうした中で、無痛分娩にどう対応していくかを考えていく必要がある。 さらに、無痛分娩費用の助成がどのような体制の産科を念頭に金額設定されるのかも大きな関心事になる。無痛分娩に対応している産科といっても、その体制には大きな差があるからだ。 例えば、代表的な施設間の差として次のような点が挙げられる。 ・麻酔管理を担当しているのが麻酔科医なのか、産科医なのか ・麻酔の注射をしているのは誰なのか 無痛管理の中心的な役割を担うのが、麻酔科医なのか、産科医なのかという違いは重要だ。 産科開業医が中心となる日本産婦人科医会が公表している2017年の調査によると、無痛分娩の無痛管理について、産科医が行っているのは病院の62.7%、診療所の84.9%。それに対して、国が認定する麻酔科標榜医の資格を持つ産科医が行っているのは病院の7.4%、診療所の12.9%。麻酔科医が行っているのは病院の47.0%、診療所の9.1%。 以上の回答は重複があるが、多くの施設で無痛管理の中心は産科医であることが示されていた。