徐福伝説が残る鹿児島県・冠岳へ。奇岩や展望など見どころ満載な低山歩き
鹿児島県の、いちき串木野市と薩摩川内市の境に冠岳という山があります。 東西に稜線を延ばし、486mの東岳、496mの中岳、最高点516mの西岳を総称して冠岳と呼ばれています。 およそ2200年前、中国秦の始皇帝の命を受け、不老不死の仙薬を求めてこの地を訪れた徐福が、冠岳から見る景色のすばらしさに自らの冠を解き、山頂に捧げたことが山名の由来だと伝えられています。さらに、南九州古代山岳仏教発祥の地であり真言密教開祖の地でもあるという、低山なのに驚く歴史がある山です。 私が住む地域にも徐福伝説が多く残り、徐福上陸にちなんだ地名や老舗の菓子舗には「徐福さん」という銘菓さえあります。さらには中国から送られた徐福像まであり、「不老不死を求めた浪漫の旅人」として親しまれています。 冠岳に興味を持ったのは、たまたま、開いたガイドブックで九州百名山であること、山麓にある日本一の徐福像を見てみたいという気持ちから、登山計画を練り始めました。近くには温泉もあり、それも楽しみです。 南九州道串木野ICから、広い駐車場の冠岳展望公園に到着。ここを基点として、材木岳から経塚を経て西岳へ縦走の後、鎮國寺から冠岳展望公園に戻る周回コースを計画しました。
高さ6mの大きな徐福像は、吹上浜方面を見るように建てられていました。たくさんの人が車を止めては記念写真を撮る姿も見られ、鹿児島県民にも徐福さんは愛されているようです。
車道を進むと煙草神社入口があります。さらに道なりに進んで車道脇の小さな案内板から少し登ると、上部が大きく下部が小さく細い形で不思議なバランスを保った溶岩の柱の「傘石」があります。 煙草神社入口まで戻り、巨大な溶岩壁の間を縫うように、苔むした自然石の石段を登ります。頭上から話し声が聞こえるので、煙草神社の下付近を歩いているようです。
尾根に上がって鎖のある岩場を下ると、「その昔、蘇我馬子が撒いた煙草が自生していたことに由来する」との説明板が設置され、洞窟の奥に煙草神社があります。 先程の分岐まで戻り、照葉樹の緑深い森を稜線まで登って右へ曲がるとすぐに材木岳です。 四角柱や五角柱の自然石が積み重なった狭い山頂に行者堂があり、南側の展望が楽しめます。 ここから経塚までは照葉樹林の快適な稜線歩きです。経塚はお経の巻物がたくさん積み重なったような石があったので、「経の塚」と呼ばれたと案内板があります。