耳に合わないのに返品できない…補聴器通販トラブルが急増中!プロが教える“正しい買い方”
WHOの調査によると、65歳以上の約3人に1人が難聴を患っている。75~79歳になると、男性の71.4%、女性の67.3%と、その割合は半数を上回る。 【一覧あり】補聴器トラブル事例 耳の聴こえが悪くなったとき、購入を検討するのが補聴器だ。 しかし、補聴器の購入を巡ってはトラブルが後を絶たない。 《補聴器を購入後、耳鼻咽喉科で聴力を測定してもらったら、補聴器は必要ないと言われた》 《母親が2年おきに約50万円の補聴器を購入させられているが、音がうるさくて装着していない》 これらは、国民生活センターに寄せられた補聴器トラブルの相談事例だ。 なかには《訪問販売で勝手に家に上がり込まれ、80万円近くの補聴器を買わされた》というものまである。 相談件数の増加を懸念した国民生活センターは、2014年と2021年の2度にわたり、補聴器購入時の注意喚起を行っている。 なぜ補聴器トラブルが増加しているのか? 一般社団法人日本補聴器販売店協会の高坂雅康事務局長に話を聞いた。 「補聴器トラブルが増加している背景にはさまざまな理由があります。 一つは超高齢社会で、補聴器を購入する人が増えている点。 もう一つは補聴器の正しい購入方法がわかりにくい点です。 ご自身にあった補聴器を見つけるためには、まず耳鼻咽喉科(補聴器相談医)を受診します。そこで難聴の診断や補聴器が有効かどうかを確認してください。 治療で改善する場合など、補聴器が不要なケースもあります。 耳鼻咽喉科で受診をしないで、通信販売や店頭で勧められたまま購入をしてしまうため、トラブルにつながってしまうのです」(高坂さん、以下同) ■通販でのトラブル急増理由は「恥ずかしい」… 補聴器の主な購入先は、店頭販売、通信販売、訪問販売があげられる。 そのなかでも特にトラブルが起きやすいのが、通信販売と訪問販売だ。とくに通信販売でのトラブル件数が急増している。 「耳の聴こえが悪くなったことを、周囲に知られたくないと通信販売やネット販売を利用する人は多いです。価格もお手ごろなものが多い。 ただ、通信販売などで購入した場合、使用者にあわせた調整(フィッティング)ができません。 補聴器は装着すればすぐに聞こえるわけではなく、使用者の聴こえ方や環境にあわせて音を調整したり、聴き分けるトレーニング、アフターケアが必要なのです。 事前のフィッティング、アフターケアが一切ない状況で補聴器を使えば、当然『耳にあわない』『痛い』『思っていたのと違う』『だまされた』となってしまいます」 一方で、補聴器の販売システムそのものがトラブルの原因になっているケースもある。 補聴器は、医療機器の販売の届け出さえ提出すれば、資格がなくても販売することが可能で規制もない。極端にいえば、補聴器や耳の仕組みについて知識がなくても、補聴器を売ることができる。 そのため、さまざまな業者が参入しやすく、悪意を持った業者が参入することも容易なのだ。 また、通信販売や店舗販売はクーリング・オフ制度が適用されないことも要注意だ。