ジェイソン・ステイサム主演『ビーキーパー』音響監督、ゆりやんの配役は「完璧」洋画吹替の魅力と難しさ
「特に劇場にかかる場合は大きいスクリーンに映るので、口の動きがかなり目立つんです。だから(劇中の俳優の)口の動きとしっかり合わせないと、ちょっと不自然に見えてしまう。テレビで観るソフト用の映像なんかであれば、そこまでシビアでなくとも気にならないんですけどね」
豪華声優共演!テレビの時代
テレビで放送される洋画では、吹替声優陣によるアドリブを楽しむファンも多かったが、高橋監督は 「それはテレビ番組としての使命感でやっていた部分があると思います」と語る。「テレビは基本的には1回きりのオンエアで、再放送まで何年もかかることがありますから、その時にやれる面白いことを全部やってしまおうというスタイルが主流でした。『ポリスアカデミー』や『Mr.BOO!ミスター・ブー』のようなコメディー映画でも、チャンネルを変えさせないために『どうやったら面白くできるか』を第一に考えるんです」 「今はテレビでも劇場版として制作されたものを放送することが増えました。先ほどのリップシンクのこともありますし、字幕との整合性を取る必要もあるんでしょう。『原音にないことは入れない』『原音と違うセリフにしない』ことが増えましたね」
また、テレビ放送では、ベテラン声優同士の共演も楽しみのひとつだ。高橋監督も 「クリント・イーストウッドの『スペース カウボーイ』を日本テレビでやった時なんか、もう、レジェンド級の声優を総動員しました。イーストウッドやトミー・リー・ジョーンズといった大物俳優たちが出演する作品だったので、それに見合う声優陣を揃えたんです。山田康雄さんはもう亡くなられていたので、イーストウッドに野沢那智さんをお呼びして、菅生隆之さん、広川太一郎さん、青野武さんにお願いして。本当に50年前のスタジオのような面子(笑)。和やかな雰囲気で進行して、本当に楽しい現場でした」と当時を振り返る。
ゲスト声優に期待!
一方、昨今は芸能界からゲスト声優が起用されることも多い。声優ではなくても声がマッチするゲストについて、高橋監督は「たぶん、人の芝居に合わせることに対する拒否反応がない方なんでしょう。経験のある方でも、それが難しいという方はいるんです。中には、芸が荒れると拒否反応を示す方までいます」と語る。