老後2000万円問題には誤解も多い。個人のライフプランで考える資産形成
老後に向けた資産形成のポイント
老後2000万円問題の不確実性も踏まえて、資産形成において考えるポイントについてまとめました。 ●自分のライフプランを明確にして計画を立てる 自分の老後のライフプランを明確にするのが第一です。 月間の赤字5万円という前提は、平均的な二人暮らしの老後世帯のケースです。 年収が高ければ年金額が上振れる可能性がありますし、生活費をあまりかけないライフスタイルの方もいるでしょう。 それぞれの状況を踏まえて、自分にとっての想定不足額と資産の目標額を定める必要があります。 ●インフレのリスクを加味して資産形成を進める 金融庁の試算では、インフレのリスクが加味されていません。 将来にかけて物価が高騰すれば、金額ベースでより多くの資産を保有する必要があります。 将来のインフレ率を予想するのは困難ですが、少なくとも毎年1~2%は物価上昇する想定で資産形成を進めましょう。 例えば株や投資信託などの金融商品へ投資すれば、長期で見れば物価上昇に耐えうるだけの利回りを獲得できる可能性が相応にあります。 老後に差し掛かってからも、過度なリスクを取らないようにしつつ投資を継続するのが一つの方法です。 老後の時期に物価上昇が進めば、徐々に支出が増えて生活が困窮するリスクが高まります。 老後も投資を継続すれば、インフレの影響を抑えられるでしょう。 ●投資は早いうちから始めるほど有利 毎月少額を少しずつ貯蓄や投資に回すなら、早く始めるほど、毎月の負担が少なくても目標額を達成可能になります。 特に投資する場合は複利効果が働くため、若い時から積立投資をスタートして投資期間を長く取るのが有効です。 20歳代~30歳代のうちから余裕資金を投資に回せば、老後資産を貯められる可能性が高まります。
まとめにかえて
老後2000万円問題が話題になったのは2019年。当時もさまざまな議論がありましたが、現在でも「2000万円も必要ない」「2000万円なんかでは足りない」という声があります。 あるひとつの数字で出された試算額なだけに、あてはまらないと感じる方は多いでしょう。 大切なのは、自分自身にとって本当に必要な金額を知ることと、どのように準備するか考えることです。 世の中にはさまざまな貯蓄手段があり、それにあった金融商品があります。しかし、よくわからないままに何となく選択していることもあるのではないでしょうか。 物価上昇が進む日本において、お金を守りながら増やす視点を大切にしておきたいですね。
参考資料
・金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 」 ・総務省統計局「消費者物価指数」 ・生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」 ・金融庁「つみたてシミュレーター」
太田 彩子