老後2000万円問題には誤解も多い。個人のライフプランで考える資産形成
老後2000万円問題の3つの盲点
金融庁が示した前提をもとにすると、下記3つの視点で「2000万円」という数値の過信は禁物です。 ●介護費用が加味されていない 老後生活を送る中で、多くの方は介護を受ける局面が生じます。 介護費用について子ども世帯が負担してくれるならよいですが、そうでないなら資産形成を進めておかなければなりません。 生命保険文化センターの令和3年の調査に基づくと、介護施設の入居費用などの一時費用がひとり平均で74万円、月々の費用が8万3000円です。 また、平均的な介護期間が61.1ヶ月とあります。 これらの情報を前提とすると、夫婦二人で平均約1162万円の介護費用がかかる計算に。 生活にかかる2000万円に加えて、夫婦で1000万円以上の蓄えが必要になるのです。 ●物価上昇が加味されていない 金融庁のレポートの不足額は当時の1月赤字の平均的な赤字額「5万円」を所与として計算されています。 5万円の赤字が毎月一定して発生する見立てとなっており、そこには物価上昇率が加味されていません。 レポートが出された2019年(年初を基準に試算)から2024年4月までで、すでに物価は8%ほど上昇しています。 年金額は必ずしも物価上昇を完全に反映するとは限りません。 物価上昇により支出が拡大すれば、赤字額が増える、そして必要な資産額も増える恐れがあるのです。 ●年金額が維持される保証がない 金融庁のレポートでは、暗に年金額がレポート発行当時の水準で維持されることが前提となっています。 年金額と支出額が一定でなければ、毎月赤字が5万円という形にはならないからです。 年金制度は、今後少子高齢化の影響を受けて財源の確保が課題となっています。 国の財政や年金の納付状況等によっては、年金給付自体が先細りとなるリスクもゼロではないでしょう。 年金給付額が減少すれば月の赤字額が拡大して、必要な資産額も増えると想定されます。 次章ではこのような世の中において、どのように老後に向けた資産形成を行えばいいのか、ポイントを整理しましょう。