赤字ローカル線は「ガソリン税」で維持すべきだ 「道路財源を回せ」藻谷浩介氏インタビュー
――しかし、道路は誰でも使うが鉄道は一部の者しか使わないので道路のほうに税金を投入すべきだという反論があります。 空港も旅客用の港湾施設もそれぞれ国民の一部しか使わない施設です。さらに言うと国立大学の学生は国民の1%もいませんがキャンパスの維持費や人件費に国費が投入されています。これらについては廃止すべきという意見は出ません。 つまりは、どの交通インフラをどれくらい残して使うのかという判断の基準は、赤字か黒字かではありません。これは道路でも鉄道でも同じで判断基準は、税金投入額に比しての社会効果の大小であるべきです。
――道路と鉄道の維持管理費にはどのような違いが見られるのでしょうか。 例えば、2015年度の北海道の例で言えば、JR北海道の鉄道の維持管理費は全体で314億円かかっていますが、うち9割は諸収入でカバーしています。鉄道1mあたりでは1.2万円。JR北海道の経常赤字額は22億円でした。一方で、NEXCO東日本の道内の有料区間の高速道路の維持管理費は全体で119億円ですが、こちらは料金収入でカバーされて大幅黒字になっています。高速道路1mあたりの維持費は1.7万円です。
しかし、有料道路以外の道内の国道、道道、市町村道の維持管理費は2014年度決算で2395億円。これは全額税金で維持されています。道路の総延長距離は8万9626kmでこれは鉄道の39倍の距離に匹敵します。1mあたりの維持費は0.24万円と鉄道の5分の1程度ですが、道路のほうが総額として赤字が大きいということもできます。 「旅客鉄道は黒字であるべきだ」という認識の存在しない欧米では、「鉄道は赤字なのが当たり前」ですし、「赤字でも必要な路線はあるので、それは税金で維持する」のが常識となっています。これは日本人が、「一般道路は黒字であるべきだ」と思わず、税金での維持整備を当然と思っているのと同じです。