「カビ」を食べてしまったらどうする!? どうなる?専門家に聞くリスクと対処法
冷蔵庫からチーズを取り出し、口に入れた後でカビが生えていたことに気づく。特にカビにとって好条件が揃うこの季節、誰にでも起こりそうなことだけど、これは私たちにとって大きな問題になるのだろうか。アメリカの3人の専門家が指南する、うっかりカビを食べてしまったときの対処法とは――? 【写真】長期保存ができる「野菜とフルーツ」まとめ
カビを食べるとどうなる?
食品安全の専門家、米ノースカロライナ州立大学のベンジャミン・チャップマン教授(農業・人間科学部)は、「生鮮青果物など、多くの食品にはもともとカビ胞子が付着しています。食品や食器にも、空気中に浮遊しているカビが付いています」と話す。「カビ胞子は往々にして収穫の段階から付着しています。カビを知らず知らずのうちに食べてしまっている、というのは日常的だといえるでしょう」 とはいえ、喜んでカビの生えたパンやチーズを食べてもいいというわけではない。チャップマン博士によれば、一定の環境下ではカビによって腐敗が起きることもあり、それが体調不良を起こす場合もあるそう。 そして、ノースイースタン大学のダリン・デトワイラー准教授(食料政策)によると、カビを食べてしまった場合には、「吐き気を催したり、嘔吐したりすることもあります。ですがそれは、カビを排出しようとする体の自然な反応です」とのこと。ただ、「もちろん、食べてもまったく何も起きない場合もある」そう。
カビを食べても問題ないの?
カビの生えたパンを食べて、まったく問題なしというケースも大いにありうる。しかし、健康に害を及ぼす危険性も否めない。コーネル大学農業生命学部のアビー・スナイダー准教授(食品科学)は、「食品に生えたカビを食べることが、大きなリスクとなる場合もあります」と指摘する。 「トウモロコシや小麦、ピーナッツなど、一部の食品に付着して増殖するカビのなかには、マイコトキシンを産生するものがあります」とのこと。 マイコトキシンとは、カビなど一部の菌類が産生する「カビ毒」のこと。チャップマン教授によれば、吐き気やけいれん、嘔吐を引き起こす原因となる。 「調理済み食品に発生したカビによるマイコトキシンの産生は、いまだ研究が十分ではありません。よって、“危ない橋は渡らない”というのが安全のために推奨されます」とスナイダー博士は言う。 同時に、マイコトキシンは好熱性(高温でも生育できる)。つまり、調理しても除去することができない。 スナイダー准教授は、「マイコトキシンを産生するカビかどうかを見た目で判断することは難しい」と説明する。カビが生えた食品(たとえばハードチーズなど)は、カビが生えた部分を取り除けば食べても問題はないものの、どのくらい切り落とすかについては、慎重を期すため多めに切除した方がいいという。 また、その他の食品についてスナイダー准教授は、「カビで柔らかくなり、マイコトキシンを放出している、または表面だけでなく内部にもカビが増殖している、といった場合は、廃棄した方がいいでしょう」と述べている。 そのほか、カビが生えた食品について注意しておくべきことは、一部のカビには「アフラトキシン」と呼ばれるカビ毒を持つものがあるということだそう。これは肝臓障害の原因になるものであり、チャップマン教授によると、発がんリスクもあることが知られているそう。 世界保健機関(WHO)は、アフラトキシンにさらされるリスクを下げるため、主要なブランドが販売しているナッツやナッツバター以外は購入しないことを勧めている。さらに、カビが目に見えたり、変色していたり、しなびているようなナッツは、食べずに廃棄した方がいいとのこと。 また、ペニシリン(カビから発見された抗菌薬)にアレルギーがある人について、チャップマン教授は、過去にカビを食べてアナフィラキシーショックを起こした人がいることを重要な例として挙げている。ごくまれなケースではあるものの、カビが生えたものを食べることの危険度は、このアレルギーがある人にとっては高まってしまう。