「社会に貢献したい」戦争で手足を失ったウクライナ兵たちの新たな挑戦 義足のリハビリ、車いすバスケ「何かできるという気持ちが心を落ち着かせる」
リハビリ施設に通い、バレーボールなどで上半身の筋肉トレーニングをしていたのはオレクサンドル・トロチェンコさん(23)。東部ドネツク州で今年5月、ロシア軍が設置した地雷で負傷し、両脚を失った。「ショックはしばらく続きましたが、両親や医師、療法士のおかげで今は前向きにリハビリに取り組むことができます。もう前線に行かなくてもよくなり、正直ほっとしています」と本音を吐露する。元々建設作業員だったといい、「将来的には自分の建設会社をつくりたい」と戦後復興で社会貢献すると前を向く。 元プロバスケットボール選手のウォロディミル・ルドコフスキーさん(31)も地雷で負傷し、右足を切断した。「落ち込みましたが、死亡した仲間もいる中で、生きていることに感謝しています」と話す。娘の誕生直後に前線に赴くことになったといい、「早く普通の暮らしを取り戻して、家族との時間を大切にしたい」と力強く語った。「以前と同じように前線で戦うことはできませんが、負傷した自分にもウクライナのためにできる役割があると信じています」
▽「不屈」を意味するスポーツ大会に過去最多の選手団 増加する負傷兵の間で広まっているのがスポーツだ。同じ境遇の仲間と出会い、肉体的、精神的リハビリの場としても機能する。9月には傷病兵らによる国際スポーツ大会「インビクタス・ゲームズ」がドイツで開催される予定で、ウクライナも過去最多の選手団を派遣する。 インビクタスとはラテン語で「不屈」の意味だ。アフガニスタンでの軍務経験があるヘンリー英王子が戦争の傷を克服する機会を提供したいと提唱、関連財団が設立され、ロンドンで2014年に初めて開催された。 ドイツ・デュッセルドルフで9月9~16日に開催される今年は6回目。22カ国、500人超の傷病兵が参加し、車いすバスケのほか、卓球やアーチェリーなど計10種目が行われる。 ウクライナは9種目に計25人を派遣する予定で、全員が東部で親ロ派武装勢力とウクライナ軍の戦闘が始まった2014年以降の負傷者だ。フトツァイト青年スポーツ相は「ウクライナ人の精神を見せてきてほしい」とエールを送る。