「社会に貢献したい」戦争で手足を失ったウクライナ兵たちの新たな挑戦 義足のリハビリ、車いすバスケ「何かできるという気持ちが心を落ち着かせる」
「趣味のサッカーもしたいし、車の運転もしたい。目標は、足がないことを感じないようにすることです。まだこの社会に貢献できることがあると信じています」 シモロズさんの隣でリハビリをしていたのは南部マリウポリで戦っていたアンドリーさん(51)。侵攻直後の昨年2月の空爆で、左膝から下を切断することになった。「同じ境遇の人たちがリハビリに精を出すのを見ると元気になります」と笑顔を見せながら、「義足で歩けるようになったら前線に戻ります。マリウポリはわたしの故郷なんです。ロシアから解放しなければならないんです」と熱く語った。 リハビリセンターのアンドリー・オブチャレンコ院長によると、以前は注文から1日で完成していたが、今は順番待ちのため2週間要することもある。「患者には前線に戻る負傷兵も多くいます。ただ普通の生活を送るだけなら3Dプリンター製作の義足でもよいけれど、ここでは石こうを12層にして頑丈な義足を作っているんです。地雷を踏んでも壊れなかった義足もあります」
「毎日残業が続く」と冗談交じりに話す義肢装具士のフェドロフさんは「義足を使えるようになったときの患者の笑顔を見たいんだ」とにやり。オブチャレンコさんも「義足を着けると、足を失った負傷者は安心感を得るんです。私たちは義足を作ることで、この戦争に貢献します」と力強く語った。 ▽日本もリハビリ施設拡充を支援 ウクライナ西部リビウの市立病院は侵攻後、リハビリ施設を拡充した。地理的に比較的安全なため、多くの負傷者が訪れるからだ。使われていなかった建物を3カ月の突貫工事で改修、国内外の支援で最新鋭のリハビリ機器を備え、義肢の製作も開始した。市によると、現在月当たり100の義肢が製作できるが、負傷者の増加で今後国内の年間需要は約2万に上ると見込まれる。リハビリ施設の追加整備も急務で、日本赤十字社が支援する計画もある。 「アンブロークン(不屈)」と名付けた計画で、市などは負傷者の治療やリハビリから住居整備まで総合的な受け入れ環境づくりを推進する。市立病院の拡充計画では、侵攻当初からウクライナを支援する世界的建築家、坂茂さんが新外科病棟の設計を手がけることでも話題となった。