月37万円もらえるはずが…年金繰下げ中の69歳夫逝去。年金事務所で告げられた「遺族年金額」に残された妻、号泣【CFPが解説】
夫、まさかの急逝
年金を繰下げてから4年後のことです。夫が69歳のころ、体調不良を訴え病院で検査をすることになりました。体内にがんが見つかり、気づいたときには手の施しようもなく還らぬ人となりました。 悲しみに暮れるAさんでしたが、自身の生活のことも考えなければなりません。Aさんは夫の年金繰下げのことを思い出し年金事務所へ向かいました。
繰下げ期間中の夫の死…年金はどうなる?
Aさんの夫は、69歳で亡くなっているため4年間の繰下げ期間があります。この場合は増額となるのか年金事務所窓口で尋ねましたが、「年金(未支給年金)には、4年間の繰下げに対する増額がありません。Aさんの年金額は15万5,000円です」と返され、Aさんは夫の死の追い打ちのように感じて号泣しました。 繰り下げることによって増額するのは存命の場合で、繰下げ中に死亡した場合4年分の未支給年金をまとめて受け取り、併せて遺族厚生年金を受け取ります。つまり、繰下げ期間中に亡くなってしまった場合、増額のメリットを受けることができないということになります。 Aさんが受け取る未支給年金と遺族年金 一時金 4年分の未支給年金720万円 年金 夫の遺族厚生年金6万円 妻の年金 9万5,000円 →年金の合計15万5,000円(月換算) Aさんが受け取る年金の合計は、夫の退職前の給与よりも低い水準となってしまいました。 未支給年金というまとまった支給はありましたが、葬儀代やら治療費の補填などでほとんど消えてしまいました。 結果、年金だけでは暮らしていけず、低い賃料への引越しとパートでの収入の確保を続けることとしました。
メリットだけじゃない「年金の繰下げ受給」
年金繰下げは、働けて収入が確保できているときには有利な手段です。 ただし、繰下げ途中で受給権者に万が一のことがあったとき、突発的な出費や収入の減少など、遺族の方には収支へ影響がおよぶこともあります。 最愛のパートナーに先立たれ、悲しみが癒えぬまま収入減を防ぐべく働き続けなくてはならない……といったことはあってはなりません。 万が一の際の生活防衛資金を確保するために生命保険の活用や、常日頃からの健康への意識なども重要でしょう。 繰下げの際には、そんな側面も認識して検討いただきたいと思います。 伊藤 貴徳 伊藤FPオフィス 代表